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August 15, 2013 Vol. 369 No. 7

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DSTYK 変異と優性遺伝性尿路奇形
Mutations in DSTYK and Dominant Urinary Tract Malformations

S. Sanna-Cherchi and Others

背景

先天性腎尿路奇形症候群は,小児腎不全の原因としてもっとも多い.この障害は遺伝的に不均一であり,病因はほとんど解明されていない.

方 法

われわれは,常染色体優性遺伝形式をとる先天性腎尿路奇形症候群の 1 家族(うち 7 人が発症)を対象として,ゲノムワイド連鎖解析と全エクソーム塩基配列決定解析を行った.また,血縁関係のない患者 311 例を対象に塩基配列解析を行い,組織学的検討,機能検討も行った.

結 果

連鎖解析により,対象家族の発症例すべてに共通するゲノムの 5 つの領域を同定した.エクソーム塩基配列決定解析では,これらの連鎖間に,有害な,単一のまれな多様体,すなわちセリン–スレオニンとチロシンの二重特異性プロテインキナーゼ遺伝子(DSTYK)におけるヘテロ接合性のスプライス部位変異を同定した.この多様体は,メッセンジャー RNA の異常なスプライシングを引き起こし,この家族の発症例すべてに存在していた.ナンセンス変異,スプライス部位変異を含む,DSTYK の別の独立した変異が,血縁関係のない患者 311 例のうち 7 例に発見された.DSTYK はすべての主要臓器の成熟上皮において高度に発現しており,細胞膜に局在している.ゼブラフィッシュでノックダウンを行うと,複数の臓器の発育不全が生じた.このことから,線維芽細胞成長因子(FGF)シグナル伝達の欠損が示唆された.この所見と一致して,尿管芽と後腎間充織では DSTYK と FGF 受容体の共局在が観察された.ヒト胚性腎細胞で DSTYK をノックダウンすると,受容体チロシンキナーゼ下流の主なシグナル伝達である,FGF 刺激による細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)のリン酸化が阻害された.

結 論

先天性腎尿路奇形症候群患者の 2.3%で,独立した DSTYK 変異が発見された.このことは,DSTYK が FGF シグナル伝達の下流にあるヒトの尿路発生の主な決定因子であることを示唆する知見である.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2013; 369 : 621 - 9. )