The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

January 9, 2014 Vol. 370 No. 2

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

双極 I 型障害における GADL1 多様体とリチウム療法に対する反応性
Variant GADL1 and Response to Lithium Therapy in Bipolar I Disorder

C.-H. Chen and Others

背景

リチウムは,双極性障害の躁とうつの再発予防を目的とした維持療法の第一選択薬となっている.しかし,リチウム療法に反応を示さない患者は多い.

方 法

台湾双極性障害コンソーシアムが募集した双極 I 型障害を有する漢民族系患者 1,761 例の標本から,サブグループを選択した.Alda スケールを用いてリチウム療法に対する反応性を評価した.リチウム療法を受けている双極 I 型障害患者 294 例から成るサブグループの標本を対象に,ゲノムワイド関連解析を行った.次に,リチウム反応性ともっとも強い相関を示した一塩基多型(SNP)を用いて,患者 100 例から成る再現コホートの標本において関連を解析した.患者 24 例から成る追跡調査コホートの標本においてもこれらの SNP を解析した.ゲノムワイド関連標本のなかから,リチウムに反応を示す 94 例と示さない 94 例を対象に,エクソン,エクソン–イントロン境界,およびグルタミン酸デカルボキシラーゼ様蛋白 1 をコードする遺伝子(GADL1)のプロモーター領域の配列決定を行った.

結 果

GADL1 のイントロンに位置し,高度な連鎖不平衡状態にある 2 つの SNP,rs17026688 と rs17026651 は,ゲノムワイド関連解析(それぞれ P=5.50×10-37 と P=2.52×10-37),および患者 100 例の再現コホート標本(各 SNP について P=9.19×10-15)において,強い相関を示した.これらの 2 つの SNP は,リチウム反応性の予測に関して感度 93%であり,追跡調査のコホートにおいて反応が良好な患者と不良な患者を識別した.GADL1 の再配列決定を行った結果,新たな多様体 IVS8+48delG が明らかになった.この多様体は,GADL1 の第 8 イントロンに位置し,rs17026688 とは完全連鎖不均衡の関係にあり,スプライシングに影響を及ぼすと考えられる.

結 論

GADL1 の遺伝的多様体は,漢民族系の双極 I 型障害患者におけるリチウム維持療法に対する反応性と相関していた.(台湾中央研究院ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2014; 370 : 119 - 28. )