腺腫発見率と大腸癌・死亡のリスク
Adenoma Detection Rate and Risk of Colorectal Cancer and Death
D.A. Corley and Others
医師が行うスクリーニング大腸内視鏡検査で 1 つ以上の腺腫が発見される割合(腺腫発見率)は,質の指標として推奨されている.しかし,腺腫発見率と,患者のその後の大腸癌(中間期癌)リスク,死亡リスクとの関連については,ほとんど明らかにされていない.
総合医療提供組織のデータを用いて,腺腫発見率と,大腸内視鏡検査から 6 ヵ月~10 年後に大腸癌が診断されるリスクおよび大腸癌関連死亡リスクとの関連を評価した.Cox 回帰により,寄与リスクの推定値を,患者の人口統計学的特性,大腸内視鏡検査の適応,併存疾患について補正した.
消化器専門医 136 人が行った大腸内視鏡検査 314,872 件を評価した.腺腫発見率は 7.4~52.5%であった.追跡期間に,進行期癌 255 例を含む中間期大腸腺癌 712 例と,中間期大腸癌による死亡 147 例が同定された.腺腫発見率の五分位群別にみた未補正の中間期癌リスクは,最低五分位群から最高五分位群でそれぞれ追跡 10,000 人年あたり 9.8 例,8.6 例,8.0 例,7.0 例,4.8 例であった.腺腫発見率が最高五分位群の医師の患者の,最低五分位群の医師の患者と比較した補正ハザード比は,中間期癌が 0.52(95%信頼区間 [CI] 0.39~0.69),進行期の中間期癌が 0.43(95% CI 0.29~0.64),致死的な中間期癌が 0.38(95% CI 0.22~0.65)であった.腺腫発見率が 1.0%上昇するごとに,癌のリスクは 3.0%低下した(ハザード比 0.97,95% CI 0.96~0.98).
腺腫発見率と,中間期大腸癌,進行期の中間期癌,致死的な中間期癌のリスクとのあいだに,負の相関が認められた.(カイザーパーマネンテ地域貢献プログラム,米国国立がん研究所から研究助成を受けた.)