タンザニアの小児における原虫数とマラリアの重症度
Parasite Burden and Severity of Malaria in Tanzanian Children
B.P. Gonçalves and Others
熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)による重症マラリアは小児の死亡の主な原因である.原虫数が重症マラリアの病態に関与しているかどうかについては議論がある.
タンザニアの小児を出生から平均 2 年間,最長 4 年間追跡し,P. falciparum の感染と疾患を記録した.
研究対象となった 882 例のうち,102 例が重度のマラリアを発症したが,エピソードが 3 回以上認められたのは 3 例のみであった.重症マラリアの初回エピソードが発現したのは,半数以上で 2 回目の感染後であった.重症マラリア例では,軽症マラリア例よりも平均原虫数が高かったものの,重症例の過半数(102 例中 67 例)は,重症マラリアの前または後,あるいは前後において,高密度感染(白血球 200 個あたりの原虫数 2,500 超)を示しながらも症状は軽度であった.重症マラリアの発症率は乳児期以降大幅に低下した一方で,高密度感染の発生率はすべての年齢群で同程度であった.重症マラリアエピソード前後の感染は同程度の原虫密度と関連していた.蚊帳の不使用,第 2 子以降の分娩時の胎盤マラリア,伝播率の高い季節,鎌状赤血球形質の欠如により,重症マラリアのリスクと,感染中の原虫密度が上昇した.
重症マラリアに対する耐性は 1 回や 2 回の軽度の感染では獲得されなかった.重症マラリアエピソード中は平均原虫数が高かったが,原虫数の高さだけでは,後に感受性であった児においても,重症マラリアを引き起こすには不十分であることが多かった.乳児期以降に重症マラリアの発症率と高密度感染の発生率が乖離すること,重症マラリアの前後で原虫数が同程度であることから,重症マラリアに対する自然獲得耐性は,原虫密度のコントロールでは説明できないことが示唆されている.(国立アレルギー感染症研究所ほかから研究助成を受けた.)