DYRK1B の変異に関連するメタボリックシンドロームの一形態
A Form of the Metabolic Syndrome Associated with Mutations in DYRK1B
A.R. Keramati and Others
遺伝子解析は,個々の心血管危険因子の原因となる変異の同定に成功してきた.メタボリックシンドロームなどの一連の心血管リスクの形質に対する感受性遺伝子のマッピングにおける成功は,依然として限定的である.
早発性冠動脈疾患,中心性肥満,高血圧,糖尿病の共遺伝が認められる 3 つの大家族を同定した.疾患の原因となる遺伝子を同定する目的で,連鎖解析と全エクソーム配列決定を行った.
DYRK1B で創始者変異が同定され,高度に保存されたキナーゼ様ドメインにおいて 102 番目のアルギニンがシステインに置換していた.この変異は,罹患した全家族員で臨床症候群とともに正確に分離され,罹患していない家族員や血縁関係のない対照には存在しなかった.疾患遺伝子の機能特性分析により,DYRK1B にコードされている非変異蛋白が SHH(ソニックヘッジホッグ)シグナル伝達経路と Wnt シグナル伝達経路を阻害し,その結果として,脂肪生成が増強されていることが明らかにされた.さらに,DYRK1B は主要な糖新生酵素であるグルコース-6-ホスファターゼの発現を促進した.R102C アレルは,これらの作用を増強させることによる,機能獲得活性を示した.もう 1 つの変異は,90 番目のヒスチジンがプロリンに置換しており,民族の異なる 1 家族において,同様の臨床症候群とともに分離されることが明らかになった.
これらの所見から,脂肪生成と糖代謝恒常性における DYRK1B の役割が示唆され,その変異した機能と,遺伝型のメタボリックシンドロームとの関連が認められた.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)