January 30, 2014 Vol. 370 No. 5
幹細胞移植における遺伝的 PTX3 欠損とアスペルギルス症
Genetic PTX3 Deficiency and Aspergillosis in Stem-Cell Transplantation
C. Cunha and Others
ロングペントラキシン 3(PTX3)として知られる可溶性パターン認識受容体は,抗真菌免疫に不可欠な役割を果たしている.PTX3 の一塩基多型(SNP)が侵襲性アスペルギルス症の発現に寄与しているかどうかは不明である.
造血幹細胞移植(HSCT)を受けた 268 例とそのドナーのコホートにおいて,侵襲性アスペルギルス症のリスクを変化させる PTX3 SNP のスクリーニングを行った.侵襲性アスペルギルス症患者 107 例とマッチさせた対照 223 例を対象とした多施設共同研究においてもこの解析を行った.PTX3 SNP の機能的転帰を in vitro とレシピエントの肺検体で検討した.
PTX3 がホモ接合型ハプロタイプ(h2/h2)であるドナーから移植を受けることは感染リスクの上昇と関連していることが,探索研究(累積発生率 37% 対 15%,補正ハザード比 3.08,P=0.003)と確認研究(補正オッズ比 2.78,P=0.03)の両方で示され,PTX3 の発現が欠損しているドナーからの移植でも同様であった.機能的には,h2/h2 好中球における PTX3 欠損によって,おそらくはメッセンジャー RNA の不安定性から貪食能と真菌のクリアランスが障害された.
PTX3 の遺伝的欠損は好中球の抗真菌能に影響を及ぼし,HSCT 患者における侵襲性アスペルギルス症のリスクに寄与する可能性がある.(欧州臨床微生物感染症学会ほかから研究助成を受けた.)