February 6, 2014 Vol. 370 No. 6
ホスホグルコムターゼ 1 欠損症の複数の表現型
Multiple Phenotypes in Phosphoglucomutase 1 Deficiency
L.C. Tegtmeyer and Others
先天性グリコシル化異常症は,糖蛋白産生が障害される遺伝性症候群である.われわれは,肝障害,口蓋垂裂,悪性高熱症,低ゴナドトロピン性性腺機能低下症,発育遅延,低血糖,ミオパチー,拡張型心筋症,心停止などのさまざまな臨床症状を呈する,新たな劣性遺伝性グリコシル化異常症の患者を評価した.
ホスホグルコムターゼ 1 の遺伝子(PGM1)の変異を同定する目的で,2 人の同胞において,ホモ接合性マッピングとそれに続く全エクソーム配列決定を行った.配列決定により,別の 15 家族でさらに変異が同定された.細胞抽出物でホスホグルコムターゼ 1 の酵素活性を測定した.グリコシル化効率の解析と,糖代謝物の定量解析を行った.ガラクトースを線維芽細胞培地に添加し,患者では食事により摂取させ,グリコシル化への影響を検討した.
ホスホグルコムターゼ 1 の酵素活性は全例で著しく低下していた.トランスフェリンの質量分析により,N-グリカンの完全な消失と,ガラクトースを欠損した切断型グリカンの存在が示された.ガラクトースを添加した線維芽細胞では,蛋白質グリコシル化の回復が認められ,グリコーゲン蓄積の所見は認めなかった.患者 6 例が食事によりガラクトースを摂取すると,臨床的改善を示唆する変化が認められた.新たなスクリーニング検査によって,患者と対照とが良好に識別された.
ホスホグルコムターゼ 1 欠損症は,これまで糖原病とみなされてきたが,先天性グリコシル化異常症でもある.ガラクトースを添加した細胞,ガラクトースを摂取した患者ではグリコシル化の生化学的指標が改善し,複合糖質の摂取によって血糖が安定化する.新たなスクリーニング検査が開発されたが,その妥当性はまだ検証されていない.(オランダ科学研究機構ほかから研究助成を受けた.)