結節性多発動脈炎の血管症における変異アデノシンデアミナーゼ 2
Mutant Adenosine Deaminase 2 in a Polyarteritis Nodosa Vasculopathy
P. Navon Elkan and Others
結節性多発動脈炎は,発症機序がほとんど解明されていない全身性壊死性血管炎である.われわれは,常染色体劣性遺伝に一致する,全身型および皮膚型結節性多発動脈炎患者が複数いる 6 家系を同定した.症例の多くは小児期に発症していた.
複数の罹患者がいるグルジアユダヤ系家族と,ドイツ系家族の一部でエクソーム配列決定を行った.その家族の罹患していない構成員と,グルジアユダヤ系の罹患者で血縁関係のない 3 例,トルコ系の罹患者で血縁関係のない 14 例で標的配列決定を行った.変異の評価は,患者の血清検体における酵素活性に対する影響の検討,蛋白構造の解析,哺乳類細胞における発現,精製蛋白の生物物理学的解析により行った.
すべての家系において,血管炎は,アデノシンデアミナーゼ 2(ADA2)をコードする遺伝子 CECR1 の劣性変異に起因していた.グルジアユダヤ人患者では,全例が Gly47Arg 置換をコードする変異がホモ接合であった.ドイツ人患者では,Arg169Gln 変異と Pro251Leu 変異が複合ヘテロ接合であり,トルコ人患者 1 例では,Gly47Val 変異と Trp264Ser 変異が複合ヘテロ接合であった.族内婚が行われてきたグルジアユダヤ人集団における Gly47Arg の保有率は 0.102 であり,高い有病率と一致している.その他の変異はいずれも,家族または患者の 1 例のみに認められたか,きわめてまれであった.患者の血清検体では ADA2 活性が有意に低下していた.ヒト胎児由来腎臓 293T 細胞で発現させると,変異分泌蛋白が少量,認められた.
主要な細胞外アデノシンデアミナーゼである増殖因子 ADA2 の劣性機能喪失変異が,結節性多発動脈炎の血管症の原因である可能性があり,その臨床的発現はきわめて多様である.(シャーレ・ゼデック医療センターほかから研究助成を受けた.)