中等症~重症のアトピー性皮膚炎の成人に対するデュピルマブ療法
Dupilumab Treatment in Adults with Moderate-to-Severe Atopic Dermatitis
L.A. Beck and Others
インターロイキン-4 およびインターロイキン-13 を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体デュピルマブ(dupilumab)は,好酸球増多を伴う喘息の患者で有効性が認められている.このような 2 型ヘルパー T 細胞(Th2)を介する炎症の主な要因をデュピルマブによって阻害することは,アトピー性皮膚炎などの Th2 関連疾患の治療に有用である可能性がある.
局所グルココルチコイドとカルシニューリン阻害薬による治療を行っても中等症~重症のアトピー性皮膚炎を有する成人を対象に,無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った.デュピルマブを単剤療法として投与する 4 週間の試験 2 件と,12 週間の試験 1 件,さらに局所グルココルチコイドと併用する 4 週間の試験 1 件で評価を行った.評価項目は,湿疹面積・重症度指数(EASI)スコア,研究者による総合評価スコア,瘙痒,安全性評価,血清バイオマーカー値,疾患のトランスクリプトームなどとした.
単剤療法の 2 件の 4 週間の試験では,デュピルマブにより,臨床指標,バイオマーカー値,トランスクリプトームに迅速かつ用量依存的な改善が認められた.単剤療法の 12 週間の試験では,4 週間の試験の所見が再現され,延長することが示された.すなわち,EASI スコアの 50%低下(EASI-50,EASI はスコアが高いほど湿疹の重症度が高いことを示す)が達成された患者の割合は,デュピルマブ群 85%に対しプラセボ群 35%(P<0.001),研究者による総合評価スコアが 0~1(皮膚病変の消失,またはほぼ消失を示す)であった患者の割合は,デュピルマブ群 40%に対しプラセボ群 7%(P<0.001),瘙痒スコアの低下(瘙痒の軽減を示す)は,デュピルマブ群 55.7%に対しプラセボ群 15.1%(P<0.001)であった.併用試験では,デュピルマブ+局所グルココルチコイド群における局所グルココルチコイドの投与量がプラセボ+局所グルココルチコイド群の半分未満であった(P=0.16)にもかかわらず,デュピルマブ+局所グルココルチコイド群では 100%が EASI-50 を達成したのに対し,プラセボ+局所グルココルチコイド群では 50%であった(P=0.002).皮膚感染のような有害事象の発現頻度はプラセボ群のほうが高かったが,デュピルマブ群では鼻咽頭炎と頭痛の発現頻度が高かった.
デュピルマブによる治療を受けた患者では,アトピー性皮膚炎の疾患活動性指標のすべてにおいて,迅速かつ顕著な改善が示された.副作用プロファイルは用量を制限するものではなかった.(Regeneron Pharmaceuticals 社と Sanofi 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01259323,NCT01385657,NCT01639040,NCT01548404)