HLA ハプロタイプと国による小児セリアック病のリスク
Risk of Pediatric Celiac Disease According to HLA Haplotype and Country
E. Liu and Others
DR3–DQ2 または DR4–DQ8 の HLA ハプロタイプの存在は,セリアック病のリスク上昇と関連している.また,セリアック病のほぼすべての小児が組織トランスグルタミナーゼ(tTG)に対する血清抗体を有している.
米国,フィンランド,ドイツ,スウェーデンにおいて,HLA ハプロタイプが DR3–DQ2 または DR4–DQ8 の小児 6,403 例を対象に,出生時から前向き研究を行った.主要評価項目はセリアック病自己免疫の発症とし,3 ヵ月以上間隔をあけた連続する 2 回の検査で tTG 抗体の存在が確認されることと定義した.副次的評価項目はセリアック病の発症とし,生検で確認されるか,またはこの研究の目的のために tTG 抗体高値が持続していることと定義した.
追跡期間中央値は 60 ヵ月であった(四分位範囲 46~77).セリアック病自己免疫は 786 例(12%)が発症した.生検を受けた 350 例中 291 例がセリアック病と確定され,生検を受けなかった別の 21 例では,tTG 抗体高値の持続が認められた.DR3–DQ2 ハプロタイプを 1 コピー有する児では,5 歳までにセリアック病自己免疫を発症するリスクが 11%,5 歳までにセリアック病を発症するリスクが 3%であり,2 コピー有する児(DR3–DQ2 ホモ接合)ではそれぞれ 26%と 11%であった.補正モデルにおいて,セリアック病自己免疫のハザード比は,もっともリスクの低い遺伝型(DR4–DQ8 のヘテロ接合体またはホモ接合体)の児と比較して,DR3–DQ2 のヘテロ接合体では 2.09(95%信頼区間 [CI] 1.70~2.56),ホモ接合体では 5.70(95% CI 4.66~6.97)であった.また,スウェーデンに在住していることも,セリアック病自己免疫のリスク上昇に独立して関連していた(ハザード比 1.90,95% CI 1.61~2.25).
HLA ハプロタイプが DR3–DQ2 で,とくにホモ接合体を有する小児は,小児期早期に,セリアック病自己免疫およびセリアック病を発症するリスクが高いことが明らかになった.また,スウェーデンでは他国よりもリスクが高いことから,セリアック病に関連する環境因子の研究の重要性が強調される.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所ほかから研究助成を受けた.)