成人重症患者における輸血血液の保存期間
Age of Transfused Blood in Critically Ill Adults
J. Lacroix and Others
重症患者の輸血に新鮮赤血球を用いることで,長期保存によって生じる,細胞の変化による毒性や生物活性物質蓄積のリスクが最小限に抑えられると同時に酸素供給能が高まり,転帰が改善する可能性がある.
多施設共同無作為化盲検試験において,成人重症患者を,保存期間が 8 日未満の赤血球を輸血する群と,標準的に供給される赤血球(血液バンクで適合する赤血球のうちもっとも古いもの)を輸血する群に割り付けた.主要評価項目は 90 日死亡率とした.
2009 年 3 月~2014 年 5 月に,カナダと欧州の 64 施設で 1,211 例を新鮮赤血球の輸血(新鮮血群)に,1,219 例を標準的に供給される赤血球の輸血(標準血群)に割り付けた.赤血球保存期間の平均(±SD)は,新鮮血群で 6.1±4.9 日であったのに対し,標準血群では 22.0±8.4 日であった(P<0.001).90 日の時点で新鮮血群の 448 例(37.0%)と,標準血群の 430 例(35.3%)が死亡していた(絶対リスク差 1.7 パーセントポイント,95%信頼区間 [CI] -2.1~5.5).生存解析では,新鮮血群における死亡の標準血群に対するハザード比は 1.1(95% CI 0.9~1.2)であった(P=0.38).副次的評価項目(重大な疾患,呼吸・循環・腎補助を行った日数,入院期間,輸血反応)のいずれにおいても,サブグループ解析においても,群間で有意差は認められなかった.
成人重症患者において,新鮮赤血球を輸血しても,標準的に供給される赤血球を輸血した場合と比較して,90 日死亡率は低下しなかった.(カナダ保健研究機構ほかから研究助成を受けた.Current Controlled Trials 登録番号 ISRCTN44878718)