April 23, 2015 Vol. 372 No. 17
遺伝的に決定された身長と冠動脈疾患
Genetically Determined Height and Coronary Artery Disease
C.P. Nelson and Others
成人身長と冠動脈疾患(CAD)リスクとのあいだにみられる逆相関の性質と,その基礎にある機序は明らかにされていない.
遺伝学的手法により,身長に関連する遺伝子多様体 180 個を用いて,身長と CAD との関連を検討した.遺伝的に決定された身長の 1 SD(6.5 cm)の違いと CAD リスクとの関連を,症例 65,066 例と対照 128,383 例において検討した.身長に関連する複数のアレルについて,その存在と CAD リスクとの関連についても,18,249 人の個人レベルの遺伝型データを用いて検討した.推定される機序を明らかにするために,遺伝的に決定された身長が既知の心血管危険因子と関連するかどうかを解析し,身長に関連する遺伝子の経路解析を行った.
CAD リスクは,遺伝的に決定された身長が 1 SD 低くなるごとに相対的に 13.5%(95%信頼区間 [CI] 5.4~22.1,P<0.001)上昇することが観察された.身長が高くなる多様体の多さと,CAD リスクの低下とのあいだに,段階的な関連が認められた(身長の第 4 四分位群の第 1 四分位群に対するオッズ比 0.74,95% CI 0.68~0.84,P<0.001).検討した危険因子 12 個のうち,有意な関連が認められたのは,低比重リポ蛋白コレステロール値とトリグリセライド値のみであった(関連の割合は約 30%).発達と動脈硬化の両方に関連する遺伝子を含む,いくつかの重複する経路が同定された.
遺伝的に決定された身長が低いほど,CAD リスクが上昇するという第一の関連が認められた.この関連の一部は,低身長と不良な脂質プロファイルの関連によって説明される.身長と動脈硬化の発症を決定する共通の生物学的過程から,この関連の一部が説明される可能性がある.(英国心臓財団ほかから研究助成を受けた.)