小児および青年におけるメンタルヘルスケアの動向
Trends in Mental Health Care among Children and Adolescents
M. Olfson, B.G. Druss, and S.C. Marcus
若年者に対するメンタルヘルス治療が増加し,精神病理学の概念化が拡大するなかで,重症度の低いメンタルヘルス障害の若年者に対する治療が不均衡に増加していることに懸念が生じている.
6~17 歳の若年者による外来メンタルヘルスサービスの利用動向を把握するため,米国の世帯を対象に全米規模で行われた代表的な調査である医療費支出パネル調査の 1996~98 年,2003~05 年,2010~12 年のデータを分析した.対象は 53,622 人であった.メンタルヘルス障害は,コロンビア障害スケール(0~52 のスコアで,高いほど障害が重度であることを示す)を用いて評価した.スコア 16 以上を重症度の高い障害とし,スコア 16 未満を重症度の低い障害として対象を分類した.
外来メンタルヘルスサービスを利用した若年者の割合は,1996~98 年の 9.2%から 2010~12 年には 13.3%に増加した(オッズ比 1.52,95%信頼区間 1.35~1.72).これに比例する,障害の重症度が高い若年者におけるメンタルヘルスサービス利用の増加(26.2%から 43.9%に増加)は,障害の重症度が低いまたは障害がない若年者(6.7%から 9.6%に増加)よりも大きかった.しかし,年間のサービス利用における絶対的増加は,障害の重症度が低いまたは障害がない若年者(274 万人から 419 万人に増加)のほうが,障害の重症度が高い若年者(156 万人から 228 万人に増加)よりも大きかった.心理療法の利用(4.2%から 6.0%に増加)と,興奮薬や関連薬(4.0%から 6.6%に増加),抗うつ薬(1.5%から 2.6%に増加),抗精神病薬(0.2%から 1.2%に増加)を含む向精神薬の利用(5.5%から 8.9%に増加)に有意な全体的増加が認められた.
米国では,小児および青年における外来メンタルヘルス治療と向精神薬の利用は,1996~98 年から 2010~12 年のあいだに増加した.障害の重症度が低いまたは障害がない若年者は,サービス利用の絶対的増加の多くを占めていたが,障害の重症度が高い若年者によるサービス利用の相対的増加が最大であった.しかし,2010~12 年にサービスを利用したのは半数未満であった.(米国医療研究品質局およびニューヨーク州精神医学研究所から研究助成を受けた.)