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January 15, 2015 Vol. 372 No. 3

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静脈血栓症予防のための第 XI 因子アンチセンスオリゴヌクレオチド
Factor XI Antisense Oligonucleotide for Prevention of Venous Thrombosis

H.R. Büller and Others

背景

実験データでは,第 XI 因子濃度を低下させると出血を引き起こすことなく血栓症が軽減されることが示されているが,ヒトにおいて,術後の静脈血栓症予防に第 XI 因子が果たす役割は明らかにされていない.FXI-ASO(ISIS 416858)は,第 XI 因子濃度を特異的に低下させる第二世代アンチセンスオリゴヌクレオチドである.われわれは,人工膝関節全置換術を受ける患者を対象に FXI-ASO の有効性と安全性をエノキサパリンと比較した.

方 法

非盲検並行群間試験において,待期的初回片側人工膝関節全置換術を施行する 300 例を,1 日 1 回,200 mg または 300 mg の FXI-ASO を投与する群と,エノキサパリン 40 mg を投与する群に無作為に割り付けた.主要有効性転帰は静脈血栓塞栓症の発現率とした(必須とした両下肢静脈造影,または症候性イベントの報告をもとに評価).主な安全性転帰は重大な出血,または重大ではないが臨床的に重要な出血とした.

結 果

手術時の第 XI 因子の平均(±SE)濃度は,FXI-ASO 200 mg 群で 0.38±0.01 単位/mL,FXI-ASO 300 mg 群で 0.20±0.01 単位/mL,エノキサパリン群で 0.93±0.02 単位/mL であった.主要有効性転帰は,エノキサパリン群の 69 例中 21 例(30%)で発現したのに対し,FXI-ASO 200 mg 群では 134 例中 36 例(27%),FXI-ASO 300 mg 群では 71 例中 3 例(4%)で発現した.エノキサパリンと比較して,200 mg レジメンは非劣性を,300 mg レジメンは優越性を示した(P<0.001).出血は,FXI-ASO 200 mg 群の 3%,FXI-ASO 300 mg 群の 3%,エノキサパリン群の 8%にみられた.

結 論

この試験により,第 XI 因子が術後静脈血栓塞栓症に寄与していることが示された.また,待期的初回片側人工膝関節全置換術を受ける患者において,第 XI 因子濃度を低下させることは術後静脈血栓塞栓症の予防に有効な方法であり,出血リスクに関しても安全であると考えられた.(Isis Pharmaceuticals 社から研究助成を受けた.FXI-ASO TKA 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01713361)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2015; 372 : 232 - 40. )