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February 5, 2015 Vol. 372 No. 6

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急性期脳卒中における神経保護薬としての硫酸マグネシウムの病院到着前投与
Prehospital Use of Magnesium Sulfate as Neuroprotection in Acute Stroke

J.L. Saver and Others

背景

硫酸マグネシウムは,脳卒中の前臨床モデルでは神経保護作用が確認されており,ヒトでは,脳卒中の発症後早期に投与した場合に,有効性の可能性を示す兆候と,忍容可能な安全性プロファイルが示されている.神経保護薬投与の開始が遅いことが,これまでの第 3 相試験の妨げとなっていた.

方 法

脳卒中が疑われる患者を,硫酸マグネシウム静注群とプラセボ静注群に無作為に割り付け,発症後 2 時間以内に投与を開始した.患者が病院に到着する前に,救命救急士が初回大量投与を開始し,病院到着時に 24 時間の維持点滴を開始した.主要評価項目は 90 日の時点での障害の程度とし,修正 Rankin スケール(0~6 のスコアで,高いほど障害が大きいことを示す)のスコアにより評価した.

結 果

登録した 1,700 例(マグネシウム群 857 例,プラセボ群 843 例)において,平均(±SD)年齢は 69±13 歳で,42.6%が女性であり,脳卒中重症度に関するロサンゼルス運動スケール(0~10 のスコアで,高いほど運動障害が大きいことを示す)の治療前スコアの平均は 3.7±1.3 であった.適格とされたイベントの最終診断は,脳虚血 73.3%,頭蓋内出血 22.8%,脳卒中類似疾患 3.9%であった.患者に脳卒中症状がないことが最後に確認された時点から試験薬投与が開始されるまでの間隔の中央値は 45 分(四分位範囲 35~62)であり,患者の 74.3%が,発症後 1 時間以内に試験薬を投与された.マグネシウム群の患者とプラセボ群の患者とのあいだで,修正 Rankin スケール全体における 90 日の時点での障害転帰の分布に有意な変化は認められず(Cochran–Mantel–Haenszel 検定により P=0.28),90 日の時点でのスコアの平均にも,マグネシウム群とプラセボ群とで差は認められなかった(各群 2.7,P=1.00).死亡率(マグネシウム群 15.4%,プラセボ群 15.5%,P=0.95),およびすべての重篤な有害事象についても,群間で有意差は認められなかった.

結 論

硫酸マグネシウム療法を病院到着前に開始することは安全であり,脳卒中発症後 2 時間以内に治療を開始することが可能になったが,90 日の時点での障害転帰は改善されなかった.(米国国立神経疾患・脳卒中研究所から研究助成を受けた.FAST-MAG 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00059332)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2015; 372 : 528 - 36. )