症候性先天性サイトメガロウイルス感染症に対するバルガンシクロビル
Valganciclovir for Symptomatic Congenital Cytomegalovirus Disease
D.W. Kimberlin and Others
症候性先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症に対する 6 週間のガンシクロビル静脈内投与により,6 ヵ月の時点での聴覚が改善することが示されているが,その有益性は経時的に減少する.
症候性先天性 CMV 感染症の新生児を対象としたバルガンシクロビル療法の無作為化プラセボ対照試験において,6 ヵ月投与と 6 週投与とを比較した.主要評価項目は,よく聴こえるほうの耳の聴力の,ベースラインから 6 ヵ月の時点までの変化とした.副次的評価項目は,ベースラインから追跡調査 12 ヵ月,24 ヵ月の時点までの聴力の変化と神経発達転帰とし,それぞれベースラインでの中枢神経系の症状について補正した.
新生児 96 例を無作為化し,6 ヵ月の時点の追跡調査データを評価しえたのは 86 例であった.6 ヵ月の時点でのよく聴こえるほうの耳の聴力は,6 ヵ月投与群と 6 週投与群とで同様であった(それぞれ改善は 2 例と 3 例,変化なしは 36 例と 37 例,悪化は 5 例と 3 例,P=0.41).12 ヵ月の時点で,全耳聴力(評価可能であった片耳または両耳の聴力)は,6 ヵ月投与群のほうが,6 週投与群よりも改善または正常を維持している可能性が高かった(73% 対 57%,P=0.01).24 ヵ月の時点で,全耳聴力における有益性は維持されていた(77% 対 64%,P=0.04).24 ヵ月の時点で,6 ヵ月投与群は,6 週投与群と比較して,神経発達を評価する Bayley 乳幼児発達検査第 3 版の言語複合構成要素(P=0.004),受容コミュニケーション尺度(P=0.003)のスコアが優れていた.最初の 6 週間に,グレード 3 または 4 の好中球減少症は 19%で発現した.その後の 4.5 ヵ月間におけるグレード 3 または 4 の好中球減少症は,6 ヵ月投与群で 21%,6 週投与群で 27%に発現した(P=0.64).
症候性先天性 CMV 感染症に対するバルガンシクロビルによる 6 ヵ月間の治療は,6 週間の治療と比較して,短期的には聴力の改善は認められなかったが,長期的には聴力と神経発達の転帰をわずかに改善すると考えられた.(米国国立アレルギー感染症研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00466817)