September 10, 2015 Vol. 373 No. 11
発作性夜間ヘモグロビン尿症の妊娠患者に対するエクリズマブ
Eculizumab in Pregnant Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria
R.J. Kelly and Others
エクリズマブは,終末補体活性化を阻害する補体蛋白 C5 に対するヒト化モノクローナル抗体であり,発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の合併症を予防し,QOL と全生存を改善することが明らかにされているが,妊娠中の女性におけるエクリズマブの使用に関するデータは少ない.
PNH の女性の妊娠に関するデータを得るための質問票を作成し,国際 PNH 専門家会議の会員と,国際 PNH 登録に参加している医師に送付した.出生した児の出生および発達の記録と,母親の有害事象を検討することにより,PNH の妊娠女性におけるエクリズマブの安全性と有効性を評価した.
質問票 94 通を送付し,75 通の返送があり,回答率は 80%であった.PNH の女性 61 例における 75 件の妊娠に関するデータを評価した.母親の死亡はなく,胎児死亡は 3 例(4%)であった.妊娠第 1 期の流産は 6 件(8%)であった.赤血球輸血の必要性は妊娠中に上昇し,妊娠前の 6 ヵ月間では 1 ヵ月あたり平均 0.14 単位であったのが,妊娠中は 0.92 単位に増加した.16 件の妊娠で血小板輸血が行われた.妊娠第 1 期を過ぎた妊娠の 54%で,エクリズマブの投与量または投与頻度の増加を余儀なくされた.妊娠の 88%で低分子ヘパリンが使用された.出血イベントは 10 件,血栓イベントは 2 件あり,血栓イベントはいずれも産褥期に発生していた.22 件(29%)の出産が早産であった.臍帯血 20 検体でエクリズマブが検出されるかどうかを検討したところ,7 検体でエクリズマブが検出された.乳児 25 例が母乳栄養で,このうち 10 例で母乳中にエクリズマブが検出されるかどうか検討したが,いずれの例にもエクリズマブは検出されなかった.
胎児生存率が高かったこと,母体合併症の発生率が低かったことから示されるように,PNH の妊娠女性に対するエクリズマブは有用であった.(ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01374360)