October 22, 2015 Vol. 373 No. 17
皮膚癌の化学予防のためのニコチン酸アミドの第 3 相無作為化試験
A Phase 3 Randomized Trial of Nicotinamide for Skin-Cancer Chemoprevention
A.C. Chen and Others
基底細胞癌や有棘細胞癌などの非黒色腫皮膚癌は,主に紫外線によって引き起こされる罹患率の高い癌である.ニコチン酸アミド(ビタミン B3)は,紫外線によって引き起こされる損傷に対して保護作用を有し,前癌病変である日光角化症の新規発生率を低下させることが示されている.
第 3 相二重盲検無作為化比較試験で,過去 5 年間に 2 つ以上の非黒色腫皮膚癌の既往がある 386 例を,1 日 2 回 500 mg のニコチン酸アミドを 12 ヵ月間投与する群とプラセボを投与する群に,1:1 の割合で無作為に割り付けた.被験者は皮膚科医の評価を 3 ヵ月ごとに 18 ヵ月間受けた.主要評価項目は,12 ヵ月の介入期間中における非黒色腫皮膚癌の新規発生数(基底細胞癌と有棘細胞癌の合計)とした.副次的評価項目は,12 ヵ月の介入期間中における有棘細胞癌と基底細胞癌の新規発生数,日光角化症の数,介入期間後 6 ヵ月間における非黒色腫皮膚癌の新規発生数,ニコチン酸アミドの安全性とした.
12 ヵ月の時点で,非黒色腫皮膚癌の新規発生率は,ニコチン酸アミド群のほうがプラセボ群よりも 23%(95%信頼区間 [CI] 4~38)低かった(P=0.02).基底細胞癌の新規発生率(ニコチン酸アミド群のほうが 20%低い [95% CI -6~39],P=0.12),有棘細胞癌の新規発生率(30%低い [95% CI 0~51],P=0.05)についても同等の差がみられた.日光角化症の数は,3 ヵ月の時点ではニコチン酸アミド群のほうがプラセボ群よりも 11%少なく(P=0.01),6 ヵ月の時点では 14%少なく(P<0.001),9 ヵ月の時点では 20%少なく(P<0.001),12 ヵ月の時点では 13%少なかった(P=0.001).12 ヵ月の介入期間中に発現した有害事象の数・種類に群間で顕著な差はみられず,ニコチン酸アミドの中止後も利益が持続することを示す根拠は認められなかった.
経口ニコチン酸アミドは,高リスク患者における非黒色腫皮膚癌と日光角化症の新規発生率を低下させるのに安全かつ有効であった.(オーストラリア国立保健医療研究審議会から研究助成を受けた.ONTRAC 試験:Australian New Zealand Clinical Trials Registry 登録番号 ACTRN12612000625875)