November 12, 2015 Vol. 373 No. 20
可溶性ウロキナーゼ受容体と慢性腎臓病
Soluble Urokinase Receptor and Chronic Kidney Disease
S.S. Hayek and Others
多様な患者集団において,可溶性ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ受容体(suPAR)の血漿濃度が比較的高いことは,巣状分節性糸球体硬化症と不良な臨床転帰に関連することが知られている.腎機能が正常な患者において,suPAR 高値が推算糸球体濾過量(eGFR)の将来的な低下と,慢性腎臓病(CKD)の発症に関連するかどうかは明らかではない.
エモリー心血管バイオバンクに登録された 3,683 例(平均年齢 63 歳,男性 65%,suPAR 中央値 3,040 pg/mL)の suPAR 血漿濃度を計測し,登録時とその後の受診時に 2,292 例の腎機能を算出した.suPAR 濃度と,ベースラインの eGFR,eGFR の経時的変化,CKD の発症(eGFR<60 mL/分/1.73 m2 体表面積)との関連を,人口統計学的変数と臨床的変数で補正後に,線形混合モデルと Cox 回帰を用いて分析した.
追跡期間中,ベースラインの suPAR 値が高いほど,eGFR の低下が大きくなることに関連し,suPAR 濃度が最高四分位群の参加者の eGFR の年間変化が -4.2 mL/分/1.73 m2 であったのに対し,最低四分位群の参加者では -0.9 mL/分/1.73 m2 であった(P<0.001).ベースラインの eGFR が正常(≧90 mL/分/1.73 m2)であった 921 例では,suPAR に関連する eGFR の低下がもっとも大きかった.ベースラインの eGFR が 60 mL/分/1.73 m2 以上であった 1,335 例では,suPAR 濃度最高四分位群における CKD への進展リスクは,最低四分位群の 3.13 倍であった(95%信頼区間 2.11~4.65).
この研究集団において,suPAR 高値は,CKD の発症と,eGFR の加速的低下と独立に関連した.(エイブラハム J. とフィリス・カッツ財団ほかから研究助成を受けた.)