November 26, 2015 Vol. 373 No. 22
1 型糖尿病における人工β細胞の在宅使用
Home Use of an Artificial Beta Cell in Type 1 Diabetes
H. Thabit and Others
人工β細胞(閉ループインスリン送達システム)を,在宅で長期使用することの実行可能性・安全性・有効性は確立されていない.
閉ループインスリン送達システムを,自宅で自由に生活できる環境下でセンサー付インスリンポンプ療法と比較する 2 件の多施設共同無作為化クロスオーバー対照試験を,1 型糖尿病患者 58 例を対象に行った.閉ループシステムの使用は,成人患者 33 例では終日,小児・思春期患者 25 例では夜間のみとした.閉ループシステムを使用する期間は 12 週間とし,センサー付インスリンポンプ療法(対照)を行う期間も同様とした.主要評価項目は,血糖値が成人患者は 70~180 mg/dL の範囲内,小児・思春期患者は 70~145 mg/dL の範囲内であった時間の割合とした.
成人では,血糖値が目標範囲内であった時間の割合は,閉ループシステムを終日使用した期間のほうが対照期間よりも 11.0 パーセントポイント(95%信頼区間 [CI] 8.1~13.8)高かった(P<0.001).平均血糖値は,閉ループ期間のほうが対照期間よりも低く(差 -11 mg/dL,95% CI -17~-6,P<0.001),血糖値が 63 mg/dL 未満であった時間の曲線下面積 [AUC] も低く(39%減少,95% CI 24~51,P<0.001),平均糖化ヘモグロビン値も低かった(差 -0.3%,95% CI -0.5~-0.1,P=0.002).小児・思春期患者では,夜間血糖値が目標範囲内であった時間の割合は,閉ループ期間のほうが対照期間よりも高く(差 24.7 パーセントポイント,95% CI 20.6~28.7,P<0.001),夜間の平均血糖値が低かった(差 -29 mg/dL,95% CI -39~-20,P<0.001).終日血糖値が 63 mg/dL 未満であった時間の AUC は,閉ループ期間のほうが 42%(95% CI 4~65)低かった(P=0.03).重症低血糖は,閉ループ期間中に,閉ループシステムを使用していないときに 3 件発生した.
1 型糖尿病患者で閉ループシステムを 12 週間使用した結果,センサー付ポンプ療法と比較して血糖コントロールが改善し,低血糖が減少し,成人では糖化ヘモグロビン値が低下した.(JDRF ほかから研究助成を受けた.AP@home04 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01961622,APCam08 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01778348)