November 24, 2016 Vol. 375 No. 21
イングランドと米国における腹部大動脈瘤の手術閾値
Thresholds for Abdominal Aortic Aneurysm Repair in England and the United States
A. Karthikesalingam and Others
腹部大動脈瘤手術の閾値は国によって大きく異なる.
イングランドと米国とで,動脈瘤手術の施行頻度,手術時の動脈瘤径の平均値,動脈瘤破裂率,動脈瘤関連死亡率の差を調査した.イングランドの病院エピソード統計(Hospital Episode Statistics)データベースと米国の全米入院患者標本(Nationwide Inpatient Sample)から,2005~12 年における未破裂腹部大動脈瘤に対する手術の施行頻度,手術を受けた患者の院内死亡率,動脈瘤破裂率に関するデータを抽出した.英国の全英血管登録(National Vascular Registry)(2014 年データ)と米国の全米手術の質改善プログラム(National Surgical Quality Improvement Program)(2013 年データ)から,手術時の動脈瘤径のデータを抽出した.米国疾病管理予防センター(CDC)と英国統計局のデータをもとに,2005~12 年の動脈瘤関連死亡率を決定した.データは,直接標準化法または条件付きロジスティック回帰を用いて,イングランドと米国とのあいだの年齢と性別の差を補正した.
2005~12 年に,イングランドでは 29,300 例,米国では 278,921 例が未破裂腹部大動脈瘤の手術を受けた.動脈瘤手術の施行頻度はイングランドのほうが米国よりも低く(オッズ比 0.49,95%信頼区間 [CI] 0.48~0.49,P<0.001),動脈瘤関連死亡率はイングランドのほうが米国よりも高かった(オッズ比 3.60,95% CI 3.55~3.64,P<0.001).動脈瘤破裂による入院頻度はイングランドのほうが米国よりも高く(オッズ比 2.23,95% CI 2.19~2.27,P<0.001),手術時の動脈瘤径の平均値はイングランドのほうが大きかった(63.7 mm 対 58.3 mm,P<0.001).
イングランドのほうが米国よりも腹部大動脈瘤手術の施行頻度が低く,手術時の動脈瘤径の平均値は大きく,米国のほうがイングランドよりも動脈瘤破裂率と動脈瘤関連死亡率が低いことが明らかになった.(英国循環器基金ほかから研究助成を受けた.)