アーミッシュおよびフッタライトの農場で生活する小児の自然免疫と喘息リスク
Innate Immunity and Asthma Risk in Amish and Hutterite Farm Children
M.M. Stein and Others
アーミッシュとフッタライトは米国で農業を営む集団であり,生活様式が多くの点でよく似ているが,農業のスタイルは異なり,前者は伝統的な方法を守り,後者は工業化された様式を取り入れている.この 2 つの集団は,喘息の有病率に著しい差があることも示されているが,その根底にある免疫応答についてはほとんどわかっていない.
アーミッシュとフッタライトの小児計 60 人で,アレルゲンおよびエンドトキシンの測定と,ハウスダスト試料の細菌構成の解析を行い,環境曝露,遺伝的祖先,免疫プロファイルを検討した.血清 IgE 値,サイトカイン応答,遺伝子発現を測定するために全血を採取し,フローサイトメトリーを用いて末梢血白血球の表現型解析を行った.実験的アレルギー性喘息モデルマウスを用いて,アーミッシュとフッタライトの人々の住居から採取したハウスダスト抽出液が,免疫応答と気道応答に及ぼす影響を評価した.
アーミッシュの小児とフッタライトの小児では遺伝的祖先と生活様式が似ているにもかかわらず,アーミッシュの喘息有病率はフッタライトの 1/4,アレルゲン感作率は 1/6 であり,ハウスダスト中のエンドトキシンの中央値は 6.8 倍であった.アーミッシュとフッタライトでは,住居のハウスダスト試料の細菌構成にも相違が認められた.また,小児の自然免疫細胞の割合,表現型,機能にも著明な差が認められた.実験的アレルギー性喘息モデルマウスにアーミッシュの住居のハウスダスト抽出液を鼻腔内滴下すると,気道過敏性と好酸球増多が有意に抑制されたが,フッタライトの住居のハウスダスト抽出液では認められなかった.自然免疫のシグナル伝達に重要な分子である MyD88 と Trif が欠損しているマウスでは,これらの防御効果は打ち消された.
ヒトとマウスで行った今回の研究の結果から,アーミッシュの生活環境は,自然免疫応答を誘発・形成することによって,喘息に対する防御効果を付与することが示唆される.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)