潰瘍性大腸炎の寛解導入・維持療法としてのトファシチニブ
Tofacitinib as Induction and Maintenance Therapy for Ulcerative Colitis
W.J. Sandborn and Others
経口小分子ヤヌスキナーゼ阻害薬トファシチニブは,潰瘍性大腸炎の寛解導入療法として有効である可能性が第 2 相試験で示された.われわれは,寛解導入・維持療法としてのトファシチニブの有効性をさらに評価した.
潰瘍性大腸炎の成人患者を対象に,トファシチニブ療法の第 3 相無作為化二重盲検プラセボ対照試験を 3 件行った.OCTAVE Induction 1 試験と OCTAVE Induction 2 試験では,従来療法または腫瘍壊死因子阻害薬治療を受けたものの中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎を有する患者それぞれ 598 例と 541 例を,トファシチニブ(10 mg を 1 日 2 回)による 8 週間の寛解導入療法群とプラセボ群に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは 8 週の時点における寛解とした.OCTAVE Sustain 試験では,寛解導入療法で臨床効果の認められた 593 例を,トファシチニブ(5 mg または 10 mg を 1 日 2 回)による 52 週間の維持療法群とプラセボ群に無作為に割り付けた.主要エンドポイントは 52 週の時点における寛解とした.
8 週の時点における寛解率は,OCTAVE Induction 1 試験ではトファシチニブ群 18.5%に対しプラセボ群 8.2%であり(P=0.007),OCTAVE Induction 2 試験ではトファシチニブ群 16.6%に対しプラセボ群 3.6%であった(P<0.001).OCTAVE Sustain 試験では,52 週の時点における寛解率は,トファシチニブ 5 mg 群 34.3%,10 mg 群 40.6%に対し,プラセボ群 11.1%であった(プラセボ群との比較でいずれも P<0.001).OCTAVE Induction 1 試験と OCTAVE Induction 2 試験では,全感染症と重篤な感染症の頻度は,トファシチニブ群のほうがプラセボ群より高かった.OCTAVE Sustain 試験では,重篤な感染症の頻度は 3 群で同程度であったが,全感染症と帯状疱疹ウイルス感染の頻度は,トファシチニブ群のほうがプラセボ群より高かった.3 試験全体で,第三者判定委員会により黒色腫以外の皮膚癌が確認されたのはトファシチニブ群 5 例,プラセボ群 1 例であり,心血管イベントが確認されたのはトファシチニブ群 5 例,プラセボ群 0 例であった.プラセボと比較して,トファシチニブは脂質高値に関連していた.
中等症~重症の活動期潰瘍性大腸炎患者において,トファシチニブは,寛解導入・維持療法として,プラセボより有効であった.(Pfizer 社から研究助成を受けた.OCTAVE Induction 1 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01465763;OCTAVE Induction 2 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01458951;OCTAVE Sustain 試験:ClinicalTrials.gov NCT01458574)