米国国立心臓・肺・血液研究所のデータリポジトリの利用状況
Use of the National Heart, Lung, and Blood Institute Data Repository
S.A. Coady and Others
臨床試験のデータ共有に関する調査は,試験の研究者・参加者のデータ共有に対する認識,障壁,姿勢を明らかにすることに重点が置かれている.しかし,臨床試験データが広く共有されたあとの利用状況や関連する論文の発表に関する情報はほとんどない.
米国国立心臓・肺・血液研究所(NHLBI)のデータリポジトリの利用状況を報告する目的で,研究者からのデータアクセス要求の記録,リンクされている文献,計量書誌学を解析した.
2000 年 1 月~2016 年 5 月に,研究者 370 人が臨床試験 1 件以上のデータを要求した.試験データの要求件数は増加してきており,195 人(53%)は調査期間の最後の 4.4 年間に要求を開始している.データを要求した主な理由は,新たな疑問の事後二次解析(72%)であり,次いで,複数の臨床試験に対する解析手法または統計手法(9%),メタ解析または統合試験調査(7%)であった.オンライン上でプロジェクトの説明がされている 172 件の要求のうち,主要転帰の結果を再解析するために要求されたのは 2 件のみであった.利用可能な臨床試験 100 件のうち 88 件のデータが 1 回以上要求されており,リポジトリ上で利用可能になってから最初の要求までの時間の中央値は 235 日であった.47 件の試験データに基づいて 277 本の論文が発表された.論文 224 本の被引用回数を計量したところ,発表された論文の半数は,引用先分類と発表年で正規化すると,累積引用回数が上位 34%に入ることが示された.
二次解析を目的とする試験データの要求は増加してきている.もとの結果の再解析または検証を事前目的とするデータ要求はまれであった.