重症難治性喘息患者におけるイマチニブによる KIT 阻害
KIT Inhibition by Imatinib in Patients with Severe Refractory Asthma
K.N. Cahill and Others
重症喘息患者の気道には,ステロイド投与を行ってもマスト細胞が存在する.マスト細胞は,QOL 不良や喘息コントロール不十分といった疾患特性に関連する.幹細胞因子とその受容体 KIT は,マスト細胞の恒常性に中心的役割を果たしている.われわれは,原理検証(proof-of-principle)試験を行い,重症喘息患者において,KIT 阻害薬イマチニブが,重症喘息の生理学的マーカーである気道過敏性と,気道内マスト細胞の数と活性化に及ぼす影響を評価した.
最大限の薬物療法を受けているにもかかわらず気道過敏性を示すコントロール不良の重症喘息患者を対象に,24 週間イマチニブを投与する無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行った.主要エンドポイントは気道過敏性の変化とし,1 秒量を 20%低下させるのに必要なメサコリン濃度(PC20)で評価した.患者は気管支鏡検査も受けた.
無作為化された 62 例では,イマチニブ投与によって,気道過敏性がプラセボ投与よりも大幅に低下した.6 ヵ月の時点で,メサコリン PC20 の上昇はイマチニブ倍量群では平均(±SD)1.73±0.60 であったのに対し,プラセボ倍量群では 1.07±0.60 であった(P=0.048).イマチニブ投与により,マスト細胞活性化マーカーである血清トリプターゼ値もプラセボと比較して大幅に低下した(2.02±2.32 ng/mL 低下 対 0.56±1.39 ng/mL 低下,P=0.02).気道内マスト細胞数は両群で減少した.イマチニブ群では,筋痙攣と低リン酸血症がプラセボ群よりも多くみられた.
重症喘息患者において,イマチニブ投与により気道過敏性が低下し,マスト細胞数とトリプターゼの放出が減少した.これらの結果から,重症喘息の病態生物学的基盤には KIT に依存する過程とマスト細胞が寄与することが示唆された.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01097694)