健常成人における単一ネフロン糸球体濾過量
Single-Nephron Glomerular Filtration Rate in Healthy Adults
A. Denic and Others
糸球体濾過量(GFR)はネフロン全体の機能を評価し,単一ネフロン GFR は 1 個のネフロンの機能を評価する.ヒトにおいて,単一ネフロン GFR が人口統計学的特性・臨床的特性,腎生検所見にどの程度関連しているかは明らかにされていない.
メイヨークリニックとクリーブランドクリニックにおいて,ドナー評価時に造影剤を用いた腎臓の CT 検査とイオタラム酸を用いた GFR 測定が行われ,腎提供時に腎生検が行われた生体腎ドナー 1,388 例を同定した.平均単一ネフロン GFR は,GFR をネフロン数(CT で評価した両腎の皮質体積に生検で測定した糸球体密度を乗じて算出)で除して算出した.人口統計学的特性・臨床的特性,生検所見と,単一ネフロン GFR との関連を検討した.
ドナーの 58%は女性で,平均(±SD)年齢は 44±12 歳であった.平均 GFR は 115±24 mL/分,平均ネフロン数は腎あたり 860,000±370,000 個,平均単一ネフロン GFR は 80±40 nL/分であった.単一ネフロン GFR には,年齢(70 歳未満の場合),性別,身長(190 cm 以下の場合)のいずれによっても有意な差は認められなかった.単一ネフロン GFR が高値であるほど,生検上より大きなネフロンと,年齢から予想される以上の糸球体硬化および動脈硬化に独立に関連していた.単一ネフロン GFR が高値であるほど,190 cm を超える身長,肥満,末期腎不全の家族歴に関連していた.
健常成人腎ドナーにおいて,単一ネフロン GFR は,年齢,性別,身長(190 cm 以下の場合)に関してほぼ一定であった.単一ネフロン GFR が高値であるほど,慢性腎臓病の特定の危険因子と,特定の腎生検所見に関連していた.(米国国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所から研究助成を受けた.)