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June 29, 2017 Vol. 376 No. 26

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比較的小さい皮膚膿瘍に対する抗菌薬のプラセボ対照試験
A Placebo-Controlled Trial of Antibiotics for Smaller Skin Abscesses

R.S. Daum and Others

背景

単純性皮膚膿瘍はよくみられるが,市中感染型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の時代における適切な治療は明らかにされていない.

方 法

成人および小児の外来患者を対象とした多施設共同前向き二重盲検試験を行った.患者を,外科的に排膿可能な膿瘍の有無,膿瘍の大きさ,皮膚感染部位の数,非化膿性蜂窩織炎の有無で層別化した.皮膚膿瘍の径が 5 cm 以下の患者を登録した.膿瘍の切開排膿後,患者を,クリンダマイシン群,トリメトプリム・スルファメトキサゾール(TMP-SMX)群,プラセボ群に無作為に割り付け,10 日間投与した.主要転帰は治療終了後 7~10 日の時点における臨床的治癒とした.

結 果

786 例を登録した.505 例(64.2%)は成人,281 例(35.8%)は小児であった.448 例(57.0%)は男性であった.黄色ブドウ球菌は 527 例(67.0%)から分離され,MRSA は 388 例(49.4%)から分離された.治療後 10 日の時点で,intention-to-treat 集団における治癒率は,クリンダマイシン群と TMP-SMX 群が同程度であり(それぞれ 266 例中 221 例 [83.1%] と 263 例中 215 例 [81.7%],P=0.73),各実治療群はプラセボ群(257 例中 177 例 [68.9%])よりも高かった(両方の比較について P<0.001).評価しえた患者集団における結果も同様であった.この有益な効果は黄色ブドウ球菌感染者に限られていた.最初に治癒した患者における,追跡 1 ヵ月の時点での新規感染の頻度は,クリンダマイシン群(221 例中 15 例 [6.8%])が,TMP-SMX 群(215 例中 29 例 [13.5%],P=0.03), プラセボ群(177 例中 22 例 [12.4%],P=0.06)よりも低かった.有害事象の頻度は,クリンダマイシン群(265 例中 58 例 [21.9%])が,TMP-SMX 群(261 例中 29 例 [11.1%]),プラセボ群(255 例中 32 例 [12.5%])よりも高かった.すべての有害事象は後遺症なく消失した.TMP-SMX を投与した 1 例が過敏反応を示した.

結 論

切開排膿単独と比較して,切開排膿にクリンダマイシンまたは TMP-SMX を併用することで,単純性膿瘍を有する患者の短期転帰が改善する.このような効果は,これらの抗菌薬の既知の副作用プロファイルと比較検討する必要がある.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00730028)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 376 : 2545 - 55. )