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November 23, 2017 Vol. 377 No. 21

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ロア糸状虫感染流行地域でのオンコセルカ症に対する test-and-not-treat 戦略
A Test-and-Not-Treat Strategy for Onchocerciasis in Loa loa–Endemic Areas

J. Kamgno and Others

背景

オンコセルカ症またはリンパ系フィラリア症の撲滅を目的としたイベルメクチンによる地域集団治療戦略の実施は,中央アフリカでは,死亡などの重篤な有害事象が循環血中のロア糸状虫(Loa loa)ミクロフィラリア濃度が高い人で発生したため,遅延している.末梢血中のロア糸状虫ミクロフィラリア濃度を測定する,LoaScope という野外でも扱いやすい診断ツールにより,重篤な有害事象のリスクがある人をポイントオブケアで迅速に同定することが可能である.

方 法

カメルーンのオコラ保健地区で,イベルメクチン投与を行うためのアプローチとして,検査して治療しない(test-and-not-treat)戦略を用いた.この地区では,ロア糸状虫感染に関連した致死的イベントが複数発生したあと,1999 年にイベルメクチンの配布が停止された.重篤な有害事象のリスクがあるとみなされる,ロア糸状虫ミクロフィラリアの血中濃度が 20,000/mL を超える人を同定し,イベルメクチンの配布対象から除外する目的で,LoaScope を使用した.投与後の有害事象の積極的監視を 6 日間毎日行った.

結 果

2015 年 8 月~10 月に,5 歳以上の 22,842 人中 16,259 人(対象集団の 71.2%)でロア糸状虫ミクロフィラリアの検査が行われた.検査を受けた人のうち,15,522 人(95.5%)がイベルメクチン投与を受け,340 人(2.1%)はロア糸状虫ミクロフィラリア濃度が危険閾値を上回ったことを理由にイベルメクチン配布対象から除外され,397 人(2.4%)は妊娠または疾患を理由に除外された.重篤な有害事象は認められなかった.重篤でない有害事象は 934 人で記録されたが,その大半(67.5%)でロア糸状虫ミクロフィラリアは検出されなかった.

結 論

LoaScope を用いた test-and-not-treat 戦略により,それまでイベルメクチンが「使用禁止」であったカメルーンの保健地区で,地域社会全体へのイベルメクチン配布を再開することができたことから,この戦略は,ロア糸状虫感染流行地域でのリンパ系フィラリア症とオンコセルカ症に対するイベルメクチン投与の大規模実施に向けた実際的アプローチとなる可能性がある.(ビル&メリンダ・ゲイツ財団ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2017; 377 : 2044 - 52. )