移植を受ける高感作患者に対する IgG エンドペプチダーゼ
IgG Endopeptidase in Highly Sensitized Patients Undergoing Transplantation
S.C. Jordan and Others
ドナー特異的抗体は,移植における免疫学的障壁となる.HLA にきわめて高い感作を示す患者において,ドナー特異的抗体を修飾する現行の治療法は限定されており,有効ではない.化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)由来 IgG 分解酵素(IdeS)は,エンドペプチダーゼの一つであり,ヒト IgG を F(ab')2 断片と Fc 断片に切断して補体依存性細胞傷害作用と抗体依存性細胞傷害作用を抑制することから,脱感作に有用である可能性が示唆されている.IdeS の脱感作と HLA 不適合ドナーからの腎移植に関する有効性を評価した 2 件の独立した非盲検第 1・2 相試験(スウェーデン,米国で実施)における知見を合わせて報告する.
HLA に高い感作を示す患者 25 例(スウェーデンのウプサラまたはストックホルム 11 例,米国のロサンゼルス 14 例)に対して,HLA 不適合ドナーからの腎移植前に IdeS を投与した.有害事象,転帰,ドナー特異的抗体,腎機能を頻回に観察し,腎生検も行った.移植後の免疫抑制療法にはタクロリムス,ミコフェノール酸モフェチル,糖質コルチコイドを用いた.米国で行われた試験では,抗体の再上昇を予防するため,移植後に静注用免疫グロブリン製剤とリツキシマブの投与も行った.
米国で行われた試験のレシピエントは,スウェーデンで行われた試験のレシピエントと比較して,冷阻血時間(臓器の提供から移植までの経過時間)が有意に長く,移植腎機能発現遅延(DGF)の割合が有意に高く,ドナー特異的クラス I 抗体値が有意に高かった.15 例で重篤な有害事象が 38 件発現した(5 件が IdeS に関連する可能性があると判定された).移植時には,総 IgG と HLA 抗体は除去されていた.25 例中 24 例で,移植後に同種移植腎の灌流を認めた.移植後 2 週~5 ヵ月の時点で抗体関連型拒絶反応が 10 例(米国 7 例,スウェーデン 3 例)で認められたが,全例が治療に反応した.非 HLA IgM 抗体・IgA 抗体を介する移植腎喪失が 1 件発生した.
IdeS は,25 例中 24 例でドナー特異的抗体を減少させるか除去し,HLA 不適合移植を可能にした.(Hansa Medical 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02224820,NCT02426684,NCT02475551)