August 31, 2017 Vol. 377 No. 9
血友病 A または B におけるアンチトロンビンの RNAi 療法による標的化
Targeting of Antithrombin in Hemophilia A or B with RNAi Therapy
K.J. Pasi and Others
現行の血友病治療では頻回の凝固因子製剤の静注が行われているが,止血予防効果の相違,高い治療負荷,抑制性同種抗体の発現リスクに関連する.フィツシラン(fitusiran)は,これらを含む限界に対処するために開発中の,アンチトロンビン(SERPINC1 にコードされる)を標的とする治験段階の RNA 干渉(RNAi)療法である.
第 1 相用量漸増試験で,健常ボランティア 4 例と,抑制性同種抗体を保有していない中等症または重症の血友病 A または B の患者 25 例を登録した.健常ボランティアには,フィツシラン(0.03 mg/kg)またはプラセボの単回皮下注射を行った.血友病患者には,フィツシランの 週 1 回(0.015 mg/kg,0.045 mg/kg,0.075 mg/kg のいずれか)または月 1 回(0.225 mg/kg,0.45 mg/kg,0.9 mg/kg,1.8 mg/kg のいずれか,または固定用量 80 mg)の投与を 3 回行った.試験の目的は,フィツシランの薬物動態/薬力学的特性,および安全性を評価することであった.
試験期間中に血栓塞栓イベントは観察されなかった.もっとも頻度が高かった有害事象は軽度の注射部位反応であった.フィツシランの血漿中濃度は用量依存的に上昇したが,反復投与による蓄積は認められなかった.月 1 回投与レジメンにより,アンチトロンビン濃度は,ベースラインから平均で最大 70~89%,用量依存的に低下した.アンチトロンビン濃度がベースラインから 75%を超えて低下すると,最大トロンビン産生量の中央値は,健常者で観察された範囲の下限に達した.
抑制性同種抗体を保有していない血友病 A または B の患者において,月 1 回のフィツシラン皮下投与により,アンチトロンビン濃度は用量依存的に低下し,トロンビン産生が亢進した.(Alnylam Pharmaceuticals 社から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02035605)