April 26, 2018 Vol. 378 No. 17
サハラ以南のアフリカにおける小児死亡率を低下させるためのアジスロマイシン
Azithromycin to Reduce Childhood Mortality in Sub-Saharan Africa
J.D. Keenan and Others
就学前児に対する広域抗菌薬の大量配布によって,現在国連の持続可能な開発目標にはほど遠い状況にあるサハラ以南のアフリカ地域での死亡率が低下すると仮定した.
クラスター無作為化試験において,マラウイ,ニジェール,タンザニアのコミュニティを,経口アジスロマイシン(約 20 mg/kg 体重)群とプラセボ群に割り付け,大量配布を年 2 回,全 4 回行った.年 2 回の人口調査で生後 1~59 ヵ月の乳幼児の存在を確認し,試験参加の機会を与えた.生存状態は,その後の人口調査で確認した.全集団を合わせた全死因死亡率を主要評価項目とし,国別の死亡率は事前に規定したサブグループ解析で評価した.
1,533 のコミュニティを無作為化し,ベースラインの人口調査で乳幼児 190,238 例が確認され,323,302 人年のモニタリングを行った.年 2 回,全 4 回の配布でのアジスロマイシンとプラセボを合わせた投与率の平均(±SD)は,90.4±10.4%であった.全体の年間死亡率は,アジスロマイシン群では 1,000 人年あたり 14.6 例(マラウイ 9.1 例,ニジェール 22.5 例,タンザニア 5.4 例),プラセボ群では 1,000 人年あたり 16.5 例(マラウイ 9.6 例,ニジェール 27.5 例,タンザニア 5.5 例)であった.死亡率は,アジスロマイシン群のほうがプラセボ群よりも全体では 13.5%低く(95%信頼区間 [CI] 6.7~19.8,P<0.001),マラウイでは 5.7%低く(95% CI -9.7~18.9),ニジェールでは 18.1%低く(95% CI 10.0~25.5),タンザニアでは 3.4%低かった(95% CI -21.2~23.0).アジスロマイシンによる効果は,月齢 1~5 ヵ月の児で最大であった(死亡率がプラセボよりも 24.9%低い,95% CI 10.6~37.0).試験薬またはプラセボの投与後 1 週間以内に発現した重篤な有害事象はまれであり,その発現率に群間で有意差は認められなかった.抗菌薬耐性の選択の評価は現在進行中である.
サハラ以南のアフリカにおける生後 1 ヵ月~就学前の小児の死亡率は,アジスロマイシンの大量配布に無作為に割り付けられたコミュニティのほうがプラセボに割り付けられたコミュニティよりも低く,もっとも大きな効果が得られたのはニジェールであった.大量配布の政策を実行するには常に,抗菌薬耐性への影響の可能性を十分に検討する必要がある.(ビル&メリンダ・ゲイツ財団から研究助成を受けた.MORDOR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02047981)