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March 15, 2018 Vol. 378 No. 11

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水疱性角膜症に対する ROCK 阻害薬を用いた培養細胞注入
Injection of Cultured Cells with a ROCK Inhibitor for Bullous Keratopathy

S. Kinoshita and Others

背景

フックス角膜内皮ジストロフィなどの角膜内皮細胞(CEC)障害は,角膜の含水量に異常をきたし,水疱性角膜症として知られる角膜混濁と視力低下を引き起こす.われわれは,Rho キナーゼ(ROCK)阻害薬を添加した培養ヒト CEC を前房内に注入することで,注入細胞の生着により CEC 密度が増加するかどうかを検討した.

方 法

CEC が検出不能となった水疱性角膜症 11 例を対象に非対照単群試験を行った.ドナー角膜から継代培養したヒト CEC 1×106 個に ROCK 阻害薬を添加し(最終量 300μL),前房内に注入した.細胞注入後は細胞接着を促すために患者に 3 時間腹臥位をとらせた.主要アウトカムは,細胞注入後 24 週における,角膜中央部の CEC 密度が 500 個/mm2 以上に増加し,かつ,角膜透明性を回復することの達成とした.副次アウトカムは,細胞注入後 24 週において,角膜厚が 630μm 未満であることと,ランドルト環視力検査で 2 段階以上に相当する最高矯正視力の向上とした.

結 果

細胞注入後 24 週において,治療した 11 眼中 11 眼(100%,95%信頼区間 [CI] 72~100)で CEC 密度は 500 個/mm2 を超えており(範囲 947~2,833),うち 10 眼では 1,000 個/mm2 を超えていた.11 眼中 10 眼(91%,95% CI 59~100)で角膜厚 630μm 未満(範囲 489~640)に回復し,最高矯正視力の 2 段階以上の向上は 11 眼中 9 眼(82%,95% CI 48~98)で認められた.

結 論

水疱性角膜症患者 11 例に ROCK 阻害薬を用いた培養ヒト CEC 注入を行い,24 週間後に CEC 密度の増加が認められた.(日本医療研究開発機構ほかから研究助成を受けた.UMIN 臨床試験登録番号 UMIN000012534)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2018; 378 : 995 - 1003. )