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March 21, 2019 Vol. 380 No. 12

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ADHD 患者におけるメチルフェニデートまたはアンフェタミンによる精神病
Psychosis with Methylphenidate or Amphetamine in Patients with ADHD

L.V. Moran and Others

背景

注意欠如・多動性障害(ADHD)の治療に,中枢神経刺激薬であるメチルフェニデートとアンフェタミン(amphetamine)の処方・使用が増えている.2007 年,米国食品医薬品局は,精神病の新規発症に関する知見に基づいて,中枢神経刺激薬のラベル表示の変更を命じた.ADHD の思春期児と若年成人における精神病リスクが各種の中枢神経刺激薬によって異なるかどうかは広く研究されていない.

方 法

2 つの民間保険請求データベースから得たデータを用いて,ADHD の診断を受けており,2004 年 1 月 1 日~2015 年 9 月 30 日にメチルフェニデートまたはアンフェタミンの服用を開始した 13~25 歳の患者を評価した.転帰は,精神病の発症日から 60 日間に抗精神病薬が処方された精神病の新規診断とした.精神病のハザード比を推定するために,各データベース内でメチルフェニデートを投与された患者とアンフェタミンを投与された患者を傾向スコアを用いてマッチさせ,2 つの中枢神経刺激薬群のあいだで精神病の発症率を比較し,次に 2 つのデータベース全体の結果をプールした.

結 果

ADHD に対し中枢神経刺激薬の処方を受けた思春期児と若年成人 337,919 例を評価した.研究対象は 221,846 例,追跡期間は 143,286 人年であった.メチルフェニデートを服用していた 110,923 例が,アンフェタミンを服用していた 110,923 例とマッチされた.精神病のエピソード(新たな精神病の診断コードと抗精神病薬の処方として定義されたエピソード)は,マッチさせた対象全体で 343 件(1,000 人年あたり 2.4)あり,内訳はメチルフェニデート群 106 件(0.10%),アンフェタミン群 237 件(0.21%)であった(アンフェタミン使用のハザード比 1.65,95%信頼区間 1.31~2.09).

結 論

中枢神経刺激薬の処方を受けていた ADHD の思春期児と若年成人において,精神病の新規発症が 660 例に約 1 例の割合で認められた.アンフェタミンの使用は,メチルフェニデートよりも高い精神病リスクと関連した.(米国国立精神衛生研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 380 : 1128 - 38. )