乳癌に対する術後補助療法実施の指針となる臨床リスクとゲノムリスクの組合せ
Clinical and Genomic Risk to Guide the Use of Adjuvant Therapy for Breast Cancer
J.A. Sparano and Others
乳癌患者に対する術後補助化学療法の実施には,再発リスクを判断するための臨床病理学的因子と 21 遺伝子解析に基づくスコアが指針となる可能性がある.乳癌再発の臨床リスクの程度が,再発スコアに加えてさらに予後情報をもたらすかどうかは明らかにされていない.
21 遺伝子解析を行ったホルモン受容体陽性,ヒト上皮増殖因子受容体 2 陰性,腋窩リンパ節転移陰性乳癌の女性 9,427 例を対象とした前向き試験で,腫瘍径と組織学的悪性度に基づき,乳癌再発について臨床リスクを「低い」「高い」に分類した.Cox 比例ハザードモデルを用いて遠隔再発のハザード比を算出することにより,臨床リスクの影響を評価した.50 歳以下の閉経前女性の大半で,初期内分泌療法はタモキシフェン単独療法であった.
臨床リスクの高低は,21 遺伝子解析に基づく再発スコア(0~100 で,スコアが高いほど予後不良または化学療法により利益が得られる可能性が高いことを示す)が中程度の 11~25 で,内分泌療法に無作為に割り付けられた女性(臨床リスクが高い女性と低い女性とを比較したハザード比 2.73,95%信頼区間 [CI] 1.93~3.87)と化学療法+内分泌療法(化学内分泌療法)に無作為に割り付けられた女性(ハザード比 2.41,95% CI 1.66~3.48),および再発スコアが高く(26~100),化学内分泌療法に割り付けられた女性(ハザード比 3.17,95% CI 1.94~5.19)の遠隔再発の予後を予測した.内分泌療法のみを受けた 50 歳以下の女性では,9 年遠隔再発率の推定値(±SE)は,再発スコアが低い(0~10)場合は臨床リスクにかかわらず 5%未満(≦1.8±0.9%)であり,再発スコアが中程度で臨床リスクが低い場合は 4.7±1.0%であった.この年齢群では,臨床リスクが高く再発スコアが中程度で内分泌療法のみを受けた女性(12.3±2.4%)と,再発スコアが高く化学内分泌療法を受けた女性(15.2±3.3%)で,9 年遠隔再発率の推定値が 10%を上回った.
臨床リスクの層別化は,21 遺伝子解析に基づく再発スコアに追加することで,有効性がより高い治療法によって利益が得られる可能性のある閉経前女性の特定に利用できる予後情報をもたらした.( 米国国立がん研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT00310180)