September 19, 2019 Vol. 381 No. 12
十分な医療サービスを受けていない集団における心血管疾患予防のためのポリピル
Polypill for Cardiovascular Disease Prevention in an Underserved Population
D. Muñoz and Others
米国で,社会経済的地位が低い人々,非白人の人々は心血管疾患を有する割合が高い.このような人々では,心血管疾患予防における利益が証明されている薬剤を少量ずつ含有する合剤(「ポリピル」とも呼ばれる)の使用が有益である可能性がある.しかし,米国で十分な医療サービスを受けていないコミュニティでのポリピル療法の使用に関して入手可能なデータはほとんどなく,このようなコミュニティでは,ガイドラインに基づく診療に対するアドヒアランスが全般的に低い.
心血管疾患を有しない成人を対象に無作為化比較試験を行った.アラバマ州にある連邦政府認定のコミュニティヘルスセンター 1 施設で,参加者をポリピル群と通常診療群に割り付けた.ポリピルの成分は,アトルバスタチン(10 mg),アムロジピン(2.5 mg),ロサルタン(25 mg),ヒドロクロロチアジド(12.5 mg)であった.主要評価項目は,収縮期血圧と低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールの 2 つの,12 ヵ月の時点でのベースラインからの変化量とした.
成人 303 例が登録され,このうち 96%が黒人であった.参加者の 3/4 が年収 15,000 ドル未満であった.10 年心血管疾患リスクの推定値の平均は 12.7%であり,ベースラインの血圧は 140/83 mmHg,ベースラインの LDL コレステロール値は 113 mg/dL であった.ポリピルの 1 ヵ月あたりの費用は 26 ドルであった.12 ヵ月の時点で,錠剤数に基づいて評価した,ポリピルレジメンに対するアドヒアランスは 86%であった.収縮期血圧の平均値は,ポリピル群で 9 mmHg 低下したのに対し,通常診療群では 2 mmHg 低下した(差 -7 mmHg,95%信頼区間 [CI] -12~-2,P=0.003).LDL コレステロールの平均値は,ポリピル群で 15 mg/dL 低下したのに対し,通常診療群では 4 mg/dL 低下した(差 -11 mg/dL,95% CI -18~-5,P<0.001).
社会経済的に脆弱なマイノリティ集団において,ポリピルを用いる戦略により,通常診療と比較して収縮期血圧と LDL コレステロール値が大きく低下した.(米国心臓協会 戦略的重点化予防研究ネットワーク,米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02278471)