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October 10, 2019 Vol. 381 No. 15

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黄斑疾患と末梢神経障害におけるセリンと脂質の代謝
Serine and Lipid Metabolism in Macular Disease and Peripheral Neuropathy

M.L. Gantner and Others

背景

遺伝様式が複雑な疾患,たとえば黄斑部毛細血管拡張症 2 型などの機序を同定することは困難である.黄斑部毛細血管拡張症 2 型とセリン代謝異常との関連はすでに確立されている.

方 法

黄斑部毛細血管拡張症 2 型の男性患者 1 例とその家族のエクソーム配列解析により,セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)のサブユニットをコードする SPTLC1 の変異体を同定した.SPT に影響を及ぼす変異は,遺伝性感覚・自律神経性ニューロパチー 1 型(HSAN1)を引き起こすことが知られているため,さらに HSAN1 患者 10 例で眼疾患の有無を調査した.黄斑部毛細血管拡張症 2 型を有するが,HSAN1 は有さず,SPT に影響を及ぼす病原性変異をもたない患者において,血清中の,デオキシスフィンゴ脂質濃度を含むアミノ酸およびスフィンゴイド塩基の濃度を測定した.セリン濃度を低下させたマウスの特性を明らかにし,ヒト網膜のオルガノイドに対するデオキシスフィンゴ脂質の作用を検討した.

結 果

HSAN1 を引き起こすことが知られている 2 つの変異体が,黄斑部毛細血管拡張症 2 型の原因として同定された.HSAN1 患者 11 例のうち 9 例は黄斑部毛細血管拡張症 2 型も有していた.SPT に影響を及ぼす病原性変異をもたない黄斑部毛細血管拡張症 2 型患者 125 例では,罹患していない対照 94 例と比較して,デオキシスフィンゴ脂質の血中濃度が 84.2%高かった.セリン濃度は対照群よりも 20.6%低く,デオキシスフィンゴ脂質濃度とセリン濃度とのあいだに負の相関が認められた.マウスでは,セリン濃度を低下させるとデオキシスフィンゴ脂質の網膜濃度が上昇し,視機能が損なわれた.網膜オルガノイドでは,デオキシスフィンゴ脂質により視細胞死が引き起こされたが,脂質代謝調節因子の存在下では引き起こされなかった.

結 論

非定型デオキシスフィンゴ脂質濃度の上昇は,SPTLC1 もしくは SPTLC2 の変異体またはセリン濃度が低いことによって引き起こされ,黄斑部毛細血管拡張症 2 型のほか,末梢神経障害の危険因子であることが示された.(ローウィ医学研究所ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2019; 381 : 1422 - 33. )