包括支払い方式導入後 8 年の医療の支出,利用,質
Health Care Spending, Utilization, and Quality 8 Years into Global Payment
Z. Song and Others
人口ベースの包括支払い方式は,医療提供者に,定義された患者集団の医療の支出目標を与えるものである.われわれは,Blue Cross Blue Shield(BCBS)of Massachusetts 社の Alternative Quality Contract (AQC)における 8 年間の支出,利用,質の変化を調査した.AQC は,金銭的報酬と罰(両面リスク)を含む,人口ベースの支払いモデルである.
difference-in-differences 法を用いて 2006~16 年のデータを解析し,主治医の属する組織が 2009 年に開始された AQC を締結した加入者の支出と,対照の州の民間保険加入者の支出とを比較した.類似した方法により,観察対象としたサービスの量を調査した.次いで,プロセスと転帰の質の指標をニューイングランド地方および米国の平均と比較した.
2009~16 年の介入後の 8 年間で,請求に対する平均年間医療支出の増加は,2009 年に AQC を締結した組織の加入者のほうが,対照の州の加入者よりも 1 人あたり 461 ドル少なく(P<0.001),相対的に 11.7%節減された.請求における節減は,初期は価格低下によるもので,後期は臨床検査や特定の画像検査,救急受診などのサービス利用の減少によるものであった.未補正の解析において,プロセスと転帰の質の指標の大半は,AQC コホートのほうがニューイングランド地方および米国全体よりも大きく改善した.全般的に,加入期間が長い集団における節減がより大きかった.2010 年,2011 年,2012 年に AQC を締結した組織の加入者の医療費請求は,2016 年までにそれぞれ 11.9%,6.9%,2.3%節減された.2012 年コホートにおける節減は,統計学的に他のコホートよりも精度が低かった.初期の AQC コホートの後半の年と,後期に登録されたコホートの全期間で,請求における節減が,質に対するボーナスや支出目標を下回った節減分の提供者への分配などのインセンティブの支払いを上回った.
BCBS 社の人口ベースの支払いモデルにより,導入後最初の 8 年間で請求に対する医療支出の増加が緩やかになり,その結果,節減額が経時的にインセンティブの支払いを上回り始めた.このモデルにおける未補正の質の指標は,地域および国全体の質の指標の平均と比較して高いか,同程度であった.(米国国立衛生研究所から研究助成を受けた.)