変形性膝関節症に対する理学療法とステロイド注射との比較
Physical Therapy versus Glucocorticoid Injection for Osteoarthritis of the Knee
G.D. Deyle and Others
理学療法とステロイド関節内注射は,いずれも変形性膝関節症に臨床的利益をもたらすことが示されている.この 2 つの治療法で,疼痛緩和と身体機能改善に対する短期的・長期的有効性が異なるかどうかは明確でない.
米軍医療システムのプライマリケアの場で,理学療法をステロイド注射と比較する無作為化試験を行った.片側または両側の変形性膝関節症を有する患者を,ステロイド注射を受ける群と理学療法を受ける群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要評価項目は,1 年の時点でのウエスタンオンタリオ大学・マクマスター大学変形性関節症指数(WOMAC)の総スコア(0~240 点で,スコアが高いほど疼痛,機能,拘縮の状態が不良であることを示す)とした.副次的評価項目はステップテストの所要時間,アップアンドゴーテストの所要時間,変化のグローバル評価(GRC)スケールのスコアとし,すべて 1 年の時点で評価した.
156 例(平均年齢 56 歳)を組み入れ,各群に 78 例を割り付けた.疼痛の強度や障害レベルなどのベースライン特性は 2 群で類似していた.ベースライン時の WOMAC スコアの平均(±SD)は,ステロイド注射群で 108.8±47.1 点,理学療法群で 107.1±42.4 点であった.1 年の時点で,スコアの平均はそれぞれ 55.8±53.8 点と 37.0±30.7 点であり(群間差の平均 18.8 点,95%信頼区間 5.0~32.6),理学療法のほうが良好であることが示された.副次的評価項目における変化は,主要評価項目の変化と同様の傾向にあった.1 例がステロイド注射中に失神した.
変形性膝関節症で理学療法を受けた患者は,ステロイド関節内注射を受けた患者よりも,1 年の時点での疼痛と機能障害が少なかった.(ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT01427153)