April 30, 2020 Vol. 382 No. 18
中国における新型コロナウイルス感染症の臨床的特徴
Clinical Characteristics of Coronavirus Disease 2019 in China
W. Guan and Others
武漢市で新型コロナウイルス感染症(coronavirus disease 2019:Covid-19)が発生し,中国全土に急速に広まった 2019 年 12 月以降,罹患者の臨床的特徴に関するデータが必要とされている.
2020 年 1 月 29 日までに中国大陸の省,自治区,直轄市の計 30 地域 552 病院で Covid-19 が検査により確認された 1,099 例のデータを抽出した.主要複合エンドポイントは集中治療室(ICU)入室,人工呼吸器の使用,死亡とした.
患者の年齢中央値は 47 歳であり,41.9%が女性であった.主要複合エンドポイントは 67 例(6.1%)で発生し,これには ICU に入室した 5.0%,侵襲的人工呼吸管理を受けた 2.3%,死亡した 1.4%が含まれた.野生動物との直接接触歴があったのは 1.9%のみであった.武漢以外に居住する患者のうち,72.3%に武漢居住者との接触歴があり,31.3%に武漢滞在歴があった.とくに頻度の高かった症状は発熱(入院時 43.8%,入院中 88.7%)と咳嗽(67.8%)であった.下痢の頻度は低かった(3.8%).潜伏期間の中央値は 4 日(四分位範囲 2~7)であった.入院時の放射線学的所見でもっともよくみられたのは胸部 CT 画像上のすりガラス状陰影(56.4%)であった.非重症患者 877 例中 157 例(17.9%)と重症患者 173 例中 5 例(2.9%)に X 線写真上,CT 画像上の異常はみられなかった.リンパ球減少が入院時に患者の 83.2%で認められた.
Covid-19 は,現在も続く集団発生の最初の 2 ヵ月間に中国全土に急速に拡大し,さまざまな重症度の疾患を引き起こした.患者は発熱を伴わずに受診することが多く,また多くの患者で,放射線学的所見に異常は認められなかった.(中国国家衛生健康委員会ほかから研究助成を受けた.)