The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

November 5, 2020 Vol. 383 No. 19

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

高齢者の転倒と骨折を予防するためのスクリーニングと介入
Screening and Intervention to Prevent Falls and Fractures in Older People

S.E. Lamb and Others

背景

高齢者の転倒発生率は,コミュニティスクリーニングとそれに基づく予防戦略によって低下する可能性がある.これらの方策が,骨折発生率,医療資源の利用,健康関連 QOL に及ぼす効果は明らかにされていない.

方 法

実用的 3 群クラスター無作為化比較試験で,郵送によるアドバイス,転倒リスクのスクリーニング,対象を絞った介入(転倒リスクが高い人への多因子転倒予防介入または運動介入)の効果を推定し,郵送によるアドバイスのみを行った場合と比較した.主要転帰は 18 ヵ月間における 100 人年あたりの骨折発生率とした.副次的転帰は,転倒,健康関連 QOL,フレイル,並行して実施した経済評価とした.

結 果

イングランドの一般診療所 63 ヵ所から 70 歳以上の人 9,803 人を無作為に抽出し,3,223 人を郵送によるアドバイスのみを行う群,3,279 人を郵送によるアドバイスに加えて,転倒リスクのスクリーニングと対象を絞った運動介入を行う群,3,301 人を郵送によるアドバイスに加えて,転倒リスクのスクリーニングと対象を絞った多因子転倒予防介入を行う群に割り付けた.運動群,多因子転倒予防群に割り付けられた人に転倒リスクスクリーニング質問票を送付した.回答済みのスクリーニング質問票は,運動群の 3,279 人中 2,925 人(89%)と,多因子転倒予防群の 3,301 人中 2,854 人(87%)から返送された.質問票を返送した 2 群 5,779 人のうち,2,153 人(37%)が転倒リスクが高いと判断され,介入を受けるよう勧められた.骨折データは 9,803 人中 9,802 人から得られた.スクリーニングと対象を絞った介入により骨折発生率は低下せず,運動群の郵送によるアドバイス群と比較した骨折発生率比は 1.20(95%信頼区間[CI] 0.91~1.59),多因子転倒予防群の郵送によるアドバイス群と比較した骨折発生率比は 1.30(95% CI 0.99~1.71)であった.運動戦略は,健康関連 QOL のわずかな向上と,総費用がもっとも低いことと関連した.試験期間中に 3 件の有害事象(狭心症発作 1 件,多因子転倒予防の評価中の転倒 1 件,大腿骨近位部骨折 1 件)が認められた.

結 論

郵送によるアドバイスに加えて,転倒リスクのスクリーニング,対象を絞った転倒予防のための運動介入または多因子介入を行っても,郵送による助言のみを行った場合と比較して,骨折は減少しなかった.(英国国立健康研究所から研究助成を受けた.ISRCTN 登録番号 ISRCTN71002650)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 383 : 1848 - 59. )