November 19, 2020 Vol. 383 No. 21
進行 ALK 陽性肺癌に対する一次治療としてのロルラチニブとクリゾチニブとの比較
First-Line Lorlatinib or Crizotinib in Advanced ALK-Positive Lung Cancer
A.T. Shaw and Others
第三世代の未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害薬ロルラチニブは,治療歴のある ALK 陽性非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対して抗腫瘍活性を有する.進行 ALK 陽性 NSCLC に対する一次治療としてのロルラチニブの,クリゾチニブと比較した有効性は不明である.
進行または転移性 ALK 陽性 NSCLC を有し,転移性 NSCLC に対する全身治療歴のない患者 296 例で,ロルラチニブをクリゾチニブと比較する国際共同無作為化第 3 相試験を行った.主要評価項目は無増悪生存期間とし,盲検下での独立した中央判定で評価された.副次的評価項目は,独立した評価による客観的奏効,頭蓋内奏効などとした.有効性の中間解析は,病勢進行または死亡の期待数 177 件のうち,約 133 件(75%)が起こったあとに実施するよう計画された.
12 ヵ月の時点での無増悪生存割合は,ロルラチニブ群で 78%(95%信頼区間 [CI] 70~84),クリゾチニブ群で 39%(95% CI 30~48)であった(病勢進行または死亡のハザード比 0.28,95% CI 0.19~0.41,P<0.001).客観的奏効はロルラチニブ群の 76%(95% CI 68~83)とクリゾチニブ群の 58%(95% CI 49~66)に認められ,測定可能な脳転移を有していた患者では,それぞれ 82%(95% CI 57~96)と 23%(95% CI 5~54)で頭蓋内奏効が得られ,また,ロルラチニブ投与を受けた患者の 71%で頭蓋内完全奏効が得られた.ロルラチニブでとくに頻度の高かった有害事象は,高脂血症,浮腫,体重増加,末梢性ニューロパチー,認知障害であった.ロルラチニブは,クリゾチニブと比較してグレード 3 または 4 の有害事象(主に脂質値の異常)が多いことと関連した(72% 対 56%).有害事象による治療中止は,それぞれ患者の 7%と 9%で発生した.
治療歴のない進行 ALK 陽性 NSCLC 患者における結果の中間解析で,ロルラチニブの投与を受けた患者は,クリゾチニブの投与を受けた患者と比較して無増悪生存期間が有意に長く,頭蓋内奏効の頻度が高かった.グレード 3 または 4 の有害事象の発現率は,ロルラチニブで脂質値の異常がみられる頻度が高かったため,クリゾチニブよりも高かった.(ファイザー社から研究助成を受けた.CROWN 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03052608)