November 26, 2020 Vol. 383 No. 22
気管支拡張症に対する DPP-1 阻害薬ブレンソカチブの第 2 相試験
Phase 2 Trial of the DPP-1 Inhibitor Brensocatib in Bronchiectasis
J.D. Chalmers and Others
気管支拡張症患者は,好中球性炎症に関連すると考えられる増悪が頻回にみられる.気管支拡張症患者の喀痰では,ベースライン時には好中球エラスターゼなどの好中球セリンプロテアーゼの活性と量が高く,増悪中はさらに増大する.ブレンソカチブ(brensocatib,INS1007)は,好中球セリンプロテアーゼの活性を担う酵素であるジペプチジルペプチダーゼ 1(DPP-1)を可逆的に阻害する経口薬である.
第 2 相無作為化二重盲検プラセボ対照試験で,過去 1 年間に増悪が少なくとも 2 回みられた気管支拡張症患者を,プラセボ群,ブレンソカチブ 10 mg 群,ブレンソカチブ 25 mg 群に 1:1:1 の割合で無作為に割り付け,1 日 1 回 24 週間投与した.初回増悪までの期間(主要エンドポイント),増悪率(副次的エンドポイント),喀痰中の好中球エラスターゼ活性,安全性を評価した.
果 256 例のうち,87 例がプラセボ群,82 例がブレンソカチブ 10 mg 群,87 例がブレンソカチブ 25 mg 群に割り付けられた.初回増悪までの期間の 25 パーセンタイル値は,プラセボ群で 67 日,ブレンソカチブ 10 mg 群で 134 日,ブレンソカチブ 25 mg 群で 96 日であった.ブレンソカチブの投与によって,プラセボと比較して初回増悪までの期間が延長した(ブレンソカチブ 10 mg 群のプラセボ群に対する P=0.03,ブレンソカチブ 25 mg 群のプラセボ群に対する P=0.04).ブレンソカチブ群のプラセボ群と比較した増悪の補正ハザード比は,10 mg 群で 0.58(95%信頼区間 [CI] 0.35~0.95,P=0.03),25 mg 群で 0.62(95% CI 0.38~0.99,P=0.046)であった.プラセボ群に対する発生率比は 10 mg 群で 0.64(95% CI 0.42~0.98,P=0.04),25 mg 群で 0.75(95% CI 0.50~1.13,P=0.17)であった.ブレンソカチブはいずれの用量でも,24 週間の投与期間中に,喀痰中の好中球エラスターゼ活性がベースラインから低下した.とくに注目すべき歯および皮膚の有害事象の発現率は,ブレンソカチブ 10 mg 群,25 mg 群ともプラセボ群より高かった.
この 24 週間の試験では,気管支拡張症患者の好中球セリンプロテアーゼ活性がブレンソカチブにより低下したことが,気管支拡張症の臨床転帰の改善に関連していた.(インスメッド社から研究助成を受けた.WILLOW 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03218917)