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December 3, 2020 Vol. 383 No. 23

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アルゼンチンにおけるアンデスウイルスの「スーパースプレッダー」とヒト-ヒト伝播
“Super-Spreaders” and Person-to-Person Transmission of Andes Virus in Argentina

V.P. Martínez and Others

背景

2018 年 11 月~2019 年 2 月に,アルゼンチンのチュブト州でアンデスウイルス(ANDV)によるハンタウイルス肺症候群のヒトからヒトへの伝播が発生し,34 例で感染が確認され,11 例が死亡した.効果的な介入をデザインするためには,ANDV のヒトからヒトへの伝播のゲノム特性,疫学的特性,臨床的特性の理解が不可欠である.

方 法

臨床情報と疫学情報は,患者の報告と公衆衛生当局の追跡により入手した.血清学的検査,接触者追跡調査,次世代シーケンシングを用いて,ANDV 感染をハンタウイルス肺症候群の集団発生の原因として同定し,ヒト-ヒト伝播イベントを再構成した.

結 果

ANDV が齧歯類の保有宿主からヒト集団に 1 回導入されたあと,人の多い社交行事に参加した有症状者 3 人により伝播が引き起こされた.18 症例の確定後,公衆衛生当局者が確定例を隔離し,接触した可能性のある者を自己隔離させた.これらの対策により,さらなる拡大が抑制された可能性がもっとも高かった.再生産数(1 人の感染者がその感染性期間中に引き起こす二次感染者数)の中央値は対策実施前は 2.12 であったが,対策実施後は 0.96 に低下した.この集団発生に関与した ANDV 株の全ゲノムシーケンシングを 27 例の検体について行ったところ,検体に存在した株(Epuyén/18–19)は,1996 年にアルゼンチンのエルボルソンで最初に確認されたヒト-ヒト伝播の原因株(Epilink/96)に類似していることが明らかになった.今回の集団発生における ANDV によるハンタウイルス肺症候群患者を対象とした臨床調査では,ウイルス量が多く,肝障害を有する患者は,そうではない患者と比較して,感染を拡大する可能性が高かったことが明らかになった.疾患の重症度,ゲノムの多様性,年齢,病院滞在期間に,二次伝播との明らかな関連は認められなかった.

結 論

ANDV によるハンタウイルス肺症候群患者のうち,ウイルス量の多い例が,大規模な社交的集まりに参加,または人と長時間接触した場合,伝播の可能性がより高いことと関連していた.(アルゼンチン保健・社会開発省ほかから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 383 : 2230 - 41. )