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August 6, 2020 Vol. 383 No. 6

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州による特殊医薬品に対する自己負担額の上限設定後の患者支出と医療保険支出
Patient and Plan Spending after State Specialty-Drug Out-of-Pocket Spending Caps

K. Yeung and Others

背景

複雑な病態や生命を脅かす病態の治療には特殊医薬品(specialty drug)が用いられ,患者と医療保険の双方にしばしば高額な費用を課す.デラウェア州,ルイジアナ州,メリーランド州の 3 州で,特殊医薬品の自己負担額に対して,処方あたり 150 ドルの上限を定める法案が可決された.このような上限の設定により,医療保険に費用が移行し,保険料が上昇する可能性が懸念されている.上限設定が患者と医療保険の支出に及ぼす影響を推定することで,今後の政策に有用な情報が得られる可能性がある.

方 法

関節リウマチ,多発性硬化症,C 型肝炎,乾癬,乾癬性関節炎,クローン病,潰瘍性大腸炎のいずれかを有し,2011~16 年に全米規模の大手保険会社 3 社が運営する民間医療保険に加入していた 65 歳未満の人 27,161 人から成る標本を解析した.主要評価項目は,特殊医薬品への支出額が 95 パーセンタイルに位置する特殊医薬品使用者における自己負担額の変化とした.その他の評価項目は,特殊医薬品,特殊医薬品以外の薬剤,薬剤以外の医療に対する,自己負担による支出額と医療保険による支出額の平均値の変化,および特殊医薬品の利用とした.自己負担額上限の制定前の 3 年間と制定後最長 3 年間に,上限を定めた 3 州における結果を,上限を定めていない隣接する対照の州と比較した.

結 果

上限設定は,特殊医薬品への支出額が 95 パーセンタイルに位置する特殊医薬品使用者において,自己負担額 1 人あたり月 -351 ドル(95%信頼区間 -554~-148)の補正後の変化と関連していた.これは支出の 32%の減少に相当する.この知見は複数の感度分析で支持された.上限設定は,その他の評価項目の変化とは関連しなかった.

結 論

特殊医薬品への支出に関する上限設定は,自己負担額がもっとも高い患者における特殊医薬品への支出の大幅な減少と関連し,将来的な保険料の代替指標である医療保険の支出額に検出可能な増加は伴わなかった.(ロバート・ウッド・ジョンソン財団 行動のための健康データプログラムから研究助成を受けた.)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2020; 383 : 558 - 66. )