肺動脈性肺高血圧症治療のためのソタテルセプト
Sotatercept for the Treatment of Pulmonary Arterial Hypertension
M. Humbert and Others
肺動脈性肺高血圧症は,肺血管リモデリング,細胞増殖,長期転帰不良を特徴とする.骨形成蛋白経路のシグナル伝達の機能障害が,遺伝性・特発性のいずれのサブタイプとも関連している.新規の融合蛋白であるソタテルセプト(sotatercept)は,増殖を促進するシグナル伝達経路と増殖を抑制するシグナル伝達経路のバランスを回復させようとして,アクチビンと増殖分化因子を結合させる.
24 週間の多施設共同試験で,肺動脈性肺高血圧症に対する基礎治療を受けている成人 106 例を,ソタテルセプト 0.3 mg/kg 体重を 3 週ごとに皮下投与する群,0.7 mg/kg を 3 週ごとに皮下投与する群,プラセボを投与する群に無作為に割り付けた.主要評価項目は 24 週時点での肺血管抵抗のベースラインからの変化量とした.
ベースライン特性は 3 群で類似していた.24 週時点での肺血管抵抗のベースラインからの変化量について,ソタテルセプト 0.3 mg 群とプラセボ群の最小二乗平均差は -145.8 dyn・sec・cm-5(95%信頼区間 [CI] -241.0~-50.6,P=0.003)であった.ソタテルセプト 0.7 mg 群とプラセボ群の最小二乗平均差は -239.5 dyn・sec・cm-5(95% CI -329.3~-149.7,P<0.001)であった.24 週時点での 6 分間歩行距離のベースラインからの変化量について,ソタテルセプト 0.3 mg 群とプラセボ群の最小二乗平均差は 29.4 m(95% CI 3.8~55.0)であった.ソタテルセプト 0.7 mg 群とプラセボ群の最小二乗平均差は 21.4 m(95% CI -2.8~45.7)であった.ソタテルセプトは,脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体 N 端フラグメント(NT-proBNP)の低下とも関連した.血液学的有害事象では,血小板減少とヘモグロビン増加の頻度が高かった.ソタテルセプト 0.7 mg 群の 1 例が心停止により死亡した.
基礎治療を受けている肺動脈性肺高血圧症患者の肺血管抵抗は,ソタテルセプトを用いた治療によって低下した.(アクセレロン・ファーマ社から研究助成を受けた.PULSAR 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03496207)