The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

May 6, 2021 Vol. 384 No. 18

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

早期アルツハイマー病に対するドナネマブ
Donanemab in Early Alzheimer’s Disease

M.A. Mintun and Others

背景

アルツハイマー病の特徴はアミロイドβ(Aβ)ペプチドの蓄積である.沈着した Aβの修飾された部位を標的とする抗体ドナネマブ(donanemab)が,早期アルツハイマー病の治療薬として検討されている.

方 法

陽電子放射断層撮影(PET)でタウとアミロイドの沈着を認める早期症候性アルツハイマー病患者を対象に,ドナネマブの第2 相試験を行った.患者を,ドナネマブの 4 週ごとの静脈内投与(最初の 3 回は 700 mg,以後は 1,400 mg)を最長 72 週間行う群と,プラセボを投与する群に 1:1 の割合で無作為に割り付けた.主要転帰は,アルツハイマー病統合評価尺度(iADRS;0~144 で,スコアが低いほど認知障害と機能障害が大きいことを示す)のスコアのベースラインから 76 週目までの変化量とした.副次的転帰は,臨床認知症評価尺度(CDR-SB),アルツハイマー病評価尺度の 13 項目の認知機能下位尺度(ADAS-Cog13),アルツハイマー病共同研究の手段的日常生活動作評価尺度(ADCS-iADL),ミニメンタルステート検査(MMSE)のスコアの変化量のほか,PET 上のアミロイドとタウの蓄積の変化量などとした.

結 果

257 例が組み入れられ,131 例がドナネマブ群,126 例がプラセボ群に割り付けられた.ベースラインの iADRS スコアは両群とも 106 であった.iADRS スコアのベースラインから 76 週目までの変化量は,ドナネマブ群で -6.86,プラセボ群で -10.06 であった(差 3.20,95%信頼区間 0.12~6.27,P=0.04).副次的転帰の大部分に,顕著な差は認められなかった.76 週の時点で,アミロイド斑の減少量はドナネマブ群のほうがプラセボ群よりも 85.06 センチロイド大きく,脳内タウ蓄積の減少量も 0.01 大きかった.ドナネマブ群では,アミロイドに関連する脳の浮腫または滲出液貯留(大部分は無症状)が出現した.

結 論

早期アルツハイマー病患者において,ドナネマブは,プラセボと比較して 76 週の時点での認知機能と日常生活動作遂行能力の複合スコアを改善したが,副次的転帰の結果にはばらつきがあった.アルツハイマー病に対するドナネマブの有効性と安全性を検討するためには,より長期かつ大規模な試験が必要である.(イーライリリー社から研究助成を受けた.TRAILBLAZER-ALZ 試験:ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT03367403)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 1691 - 704. )