デキサメタゾンと手術部位感染
Dexamethasone and Surgical-Site Infection
T.B. Corcoran and Others
グルココルチコイドであるデキサメタゾンは術後の悪心・嘔吐を予防するが,手術部位感染のリスクを上昇させる可能性への懸念がある.
実用的国際共同非劣性試験で,手術時間が 2 時間以上,術後 1 晩以上の入院が予定されている,皮膚切開長が 5 cm を超える緊急性の低い非心臓手術を受ける成人患者 8,880 例を,麻酔下でデキサメタゾン 8 mg の静脈内投与を行う群と,マッチさせたプラセボの投与を行う群に無作為に割り付けた.無作為化は,糖尿病の有無と試験施設で層別化して行った.主要転帰は術後 30 日以内の手術部位感染とした.非劣性マージンは 2.0 パーセントポイントと事前に設定した.
修正 intention-to-treat 集団は 8,725 例(デキサメタゾン群 4,372 例,プラセボ群 4,353 例)であり,そのうち 13.2%(デキサメタゾン群 576 例,プラセボ群 572 例)が糖尿病を有していた.主要解析の対象となった 8,678 例のうち,手術部位感染はデキサメタゾン群の 8.1%(4,350 例中 354 例)とプラセボ群の 9.1%(4,328 例中 394 例)に発生した(糖尿病の有無で補正したリスク差 -0.9 パーセントポイント,95.6%信頼区間 [CI] -2.1~0.3,非劣性の P<0.001).表層切開創,深部切開創,臓器・体腔の部位別,および糖尿病を有する患者における結果は,主要解析の結果と同様であった.術後 24 時間における悪心・嘔吐は,デキサメタゾン群の 42.2%とプラセボ群の 53.9%に発生した(リスク比 0.78,95% CI 0.75~0.82).糖尿病を有しない患者では,高血糖イベントがデキサメタゾン群 3,787 例中 22 例(0.6%)とプラセボ群 3,776 例中 6 例(0.2%)に発生した.
デキサメタゾンは,緊急性の低い非心臓手術後 30 日以内の手術部位感染の発生に関して,プラセボに対して非劣性であった.(オーストラリア国立保健医療研究評議会ほかから研究助成を受けた.PADDI 試験:Australian New Zealand Clinical TrialsRegistry 番号 ACTRN12614001226695)