February 4, 2021 Vol. 384 No. 5
乳癌への関与が示されている遺伝子に関する人口ベース研究
A Population-Based Study of Genes Previously Implicated in Breast Cancer
C. Hu and Others
病原性変異を受け継いだ女性のリスク評価とその管理には,癌素因遺伝子の生殖細胞系列病原性変異と関連する乳癌リスクを人口ベースで推定することがきわめて必要である.
人口ベースの症例対照研究で,「感受性との関連における癌リスク推定(CARRIERS)」コンソーシアムの人口ベース研究(12 件)に登録された乳癌女性 32,247 例(症例患者)と非乳癌女性 32,544 例(対照)において,28 個の癌素因遺伝子の生殖細胞系列病原性変異を同定するため遺伝子増幅に基づくカスタム多遺伝子パネル検査を行った.各遺伝子の病原性変異と乳癌のリスクとの関連を評価した.
確立された乳癌素因遺伝子 12 個で,病原性変異が症例患者の 5.03%と対照の 1.63%で検出された.BRCA1 と BRCA2 の病原性変異は乳癌の高いリスクと関連しており,オッズ比はそれぞれ 7.62(95%信頼区間 [CI] 5.33~11.27)と 5.23(95% CI 4.09~6.77)であった.PALB2 の病原性変異は中等度のリスクと関連していた(オッズ比 3.83,95% CI 2.68~5.63).BARD1,RAD51C,RAD51D の病原性変異はエストロゲン受容体陰性乳癌とトリプルネガティブ乳癌の高いリスクと関連し,一方 ATM,CDH1,CHEK2 の病原性変異は,エストロゲン受容体陽性乳癌の高いリスクと関連していた.16 個の乳癌素因遺伝子候補の病原性変異,たとえば NBN の病原性創始者変異 c.657_661del5 などは,乳癌の高いリスクとは関連していなかった.
この研究により,米国人口における既知の乳癌素因遺伝子の病原性変異の保有率と,関連する乳癌リスクの推定値が得られた.これらの推定値は癌の検査やスクリーニングに影響を及ぼし,これらの遺伝子の病原性変異を受け継いだ一般集団の女性の臨床管理戦略を改善することができる.(米国国立衛生研究所,乳がん研究財団から研究助成を受けた.)