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February 11, 2021 Vol. 384 No. 6

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人工前庭器による姿勢,歩行,QOL,聴力
Posture, Gait, Quality of Life, and Hearing with a Vestibular Implant

M.R. Chow and Others

背景

両側前庭機能低下は,眼,頭部,身体を安定化させる前庭反射の障害による慢性均衡障害,姿勢不安定,不安定歩行を伴う.人工前庭器は,症状の緩和に有効である可能性がある.

方 法

耳毒性(7 例)または特発性(1 例)の両側前庭機能低下を 2~23 年間有する人に,前庭神経の 3 つの半規管を電気刺激する人工前庭器を片側に埋め込んだ.臨床転帰は,Bruininks–Oseretsky 運動能力テストの平衡機能サブテストのスコア(0~36 で,スコアが高いほど平衡機能が良好であることを示す),修正ロンベルグ試験で失敗するまでの時間(0~30 秒),Dynamic Gait Index(DGI)スコア(0~24 で,スコアが高いほど歩行能力が良好であることを示す),Timed Up and Go(TUG)テストの所要時間,歩行速度,純音聴力閾値,語音弁別スコア,QOL などとした.参加者のベースライン(埋込み前)の結果と,埋込み後 6 ヵ月の時点(8 例),1 年の時点(6 例)の結果を比較した.人工前庭器は通常治療モード(刺激パルスの速度と振幅が変化して頭部回転運動が再現される)とプラセボモード(パルスの速度と振幅が一定に保たれる)に設定した.

結 果

ベースラインと 6 ヵ月の時点における Bruininks–Oseretsky テストのスコアの中央値は,それぞれ 17.5 と 21.0(参加者内の差の中央値 5.5 ポイント,95%信頼区間 [CI] 0~10.0)であり,修正ロンベルグ試験の時間の中央値は 3.6 秒と 8.3 秒(差 5.1,95%CI 1.5~27.6),DGI スコアの中央値は 12.5 と 22.5(差 10.5 ポイント,95% CI 1.5~12.0),TUG テストの時間の中央値は 11.0 秒と 8.7 秒(差 2.3,95% CI -1.7~5.0),歩行速度検査の速度の中央値は 1.03 m/秒と 1.10 m/秒(差 0.13,95% CI -0.25~0.30)であった.プラセボモードでの検査により,改善は治療モードの刺激に起因することが確認された.1 年の時点でも評価された 6 例において,ベースラインから 1 年の時点までの参加者内の変化の中央値は,6 ヵ月の時点の結果とおおむね一致した.埋込みによって同側に聴覚障害が生じ,6 ヵ月の時点で空気伝導純音聴力閾値の平均が 5 例で 3~16 dB,3 例で 74~104 dB 上昇した.参加者が報告した障害と QOL の変化は,姿勢と歩行の変化と並行していた.

結 論

両側前庭機能低下に対して人工前庭器を片側に埋め込んでから 6 ヵ月と 1 年の時点で,姿勢,歩行,QOL の測定値はベースラインからおおむね改善する傾向を示したが,1 例を除く全例で前庭器を埋め込んだ耳の聴力が低下した.(米国国立衛生研究所ほかから研究助成を受けた.ClinicalTrials.gov 登録番号 NCT02725463)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 521 - 20. )