The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE

日本国内版

年間購読お申込み

日本語アブストラクト

March 4, 2021 Vol. 384 No. 9

Share

Share on Facebook
Facebookで共有する
Share on Twitter
Twitterでつぶやく
Share on Note
noteに投稿する

RSS

RSS

肝硬変の入院患者に対するアルブミン静注の無作為化試験
A Randomized Trial of Albumin Infusions in Hospitalized Patients with Cirrhosis

L. China and Others

背景

非代償性肝硬変患者では,感染症や全身性炎症の亢進が臓器障害や死亡の原因となる.前臨床試験ではアルブミンの抗炎症作用が支持されているが,それを検証する大規模臨床試験は不足している.目標血清アルブミン濃度を 30 g/L 以上としてこれらの患者に 20%ヒトアルブミン溶液の投与を連日行うことで,標準治療と比較して感染症,腎機能障害,死亡の発生率が低下するかどうかは明らかにされていない.

方 法

非代償性肝硬変を有し,組入れ時の血清アルブミン濃度が 30 g/L 未満の入院患者を対象に,無作為化多施設共同非盲検並行群間試験を行った.患者を,目標値を設定した 20%ヒトアルブミン溶液の投与を最長 14 日間,または退院のいずれか早い時点まで受ける群と,標準治療を受ける群に無作為に割り付けた.治療は入院後 3 日以内に開始した.複合主要エンドポイントは,治療開始後 3 日目~15 日目に発生した新たな感染症,腎機能障害,死亡とした.

結 果

777 例が無作為化された.これらの患者の大部分で,アルコールが肝硬変の原因の 1 つであると報告された.アルブミン総投与量の中央値は,目標値(アルブミン濃度≧30 g/L に上昇させる)を設定したアルブミン群では 1 患者あたり 200 g(四分位範囲 140~280)であったのに対し,標準治療群では 20 g(四分位範囲 0~120)であった(補正後の差の平均 143 g,95%信頼区間 [CI] 127~158.2).主要エンドポイントイベントが発生した患者の割合に,目標値を設定したアルブミン群(380 例中 113 例 [29.7%])と標準治療群(397 例中 120 例 [30.2%])とのあいだで有意差は認められなかった(補正後のオッズ比 0.98,95% CI 0.71~1.33,P=0.87).データを退院時または 15 日目で打切りとした生存時間(time-to-event)解析でも,群間で有意差は示されなかった(ハザード比 1.04,95% CI 0.81~1.35).より重度,または生命を脅かす重篤な有害事象の発現頻度はアルブミン群のほうが標準治療群よりも高かった.

結 論

非代償性肝硬変の入院患者では,目標アルブミン濃度を 30 g/L 以上に設定するアルブミン静注は,英国における現行の標準治療と比較して有益ではなかった.(Health Innovation ChallengeFund から研究助成を受けた.ATTIRE 試験:EudraCT 登録番号2014-002300-24,ISRCT 登録番号 N14174793)

英文アブストラクト ( N Engl J Med 2021; 384 : 808 - 17. )